主観客観
2004年2月20日
【セーフティネットの拡充とモラルハザード】

 98年10月に施行された信用保証協会による「中小企業金融安定化特別保証制度」(以下、安定化制度)は2001年3月に終了したが、その後も同協会や中小金融公庫などから、中小企業向けにさまざまなセーフティネットが用意されている。

  安定化制度導入の効果を倒産件数から見ると、98年が1万9,171件だったのに対し、99年は1万5,460件と約2割減少。効果は充分あったと言え、その後のセーフティネットへの期待が高まるのも当然だ。

  しかし、安定化制度が終了し、借入金の返済が始まると倒産は再び増加。翌2000年の倒産件数は1万9,071件となり、安定化制度導入前の水準に戻ってしまった。つまり、安定化制度は確かに中小企業の資金繰りを楽にしたが、一時的な効果に過ぎなかったということだ。

  現在、「セーフティネット貸付制度」や「企業再生資金」、「売掛債権担保融資保証制度」のほか、足利銀行の一時国有化に伴う金融対策など、多くの名称の中小企業向けセーフティネットが用意されている。近年、倒産が抑制されているのは、国内の景気が回復基調にあるためだけではなく、このようなセーフティネットの存在も忘れてはならない。

  安定化制度の場合、保証先の倒産による代位弁済額が2002年度末までで1兆2,000億円を超えたが、その間、モラルハザードへの懸念を指摘されたのは記憶に新しい。セーフティネットの活用で倒産を抑制するのはいいが、くれぐれも前回のようにモラルハザードと言われないようにしてほしいものだ。

(東麻布の宮)


 【あまりにも遠い景気回復の手応え 】

 2003年10〜12月期の国内総生産(GDP)が2月18日に発表された。物価下落の影響を排除した実質GDPが、年率7.0%という高成長を記録し、外需とデジタル景気を牽引役とした景気の回復基調を裏付ける形となった。何といってもバブル期を超える成長率である。まず、景気回復の2大エンジンのうち、「設備投資」に火がついたわけだ。

  しかし、その改善は大手製造業を中心とするもので、広く浸透はしていない。内需でも、薄型テレビなど多数のデジタル新製品や女性に人気の高級ブランド品、小旅行や食事など消費意欲を誘うものは多数あるが、全体を牽引するほどの力はない。

  そこへ、今年は所得税の配偶者特別控除の原則廃止(1月)や 年金支給額の引き下げ(4月)、厚生年金保険料の段階的な引き上げ開始(10月)など、各種政策によって消費者への逆風が吹き荒れることとなる。すでに乾ききった空気ではあるが、もう1つのエンジンとなる「個人消費」が自然発火するのはいつのことになるのだろうか。

  また、将来的には消費税が10%台となることが確実視されており、その負担感は公平であるとは言えない。年金も定年退職後、相当期間を経過してから受給することになるのが確実で、消費意欲を低下させることに事欠かない状況だ。加えて、大量の国債発行によって支えられている日本の財政には、常に破綻の二文字がつきまとう。

  年率7.0%成長でも、多くの人が回復を実感できない現状である。

  いったい何%成長を達成したらその回復感を共有できるのか・・・

  景気回復を実感するまでの道のりはまだまだ遠そうだ。

(大和)


 【問われる危機管理能力】

 先週のテレビは「牛丼品切れ。最後の一杯が…」のニュースで盛りあがった。この米国産牛肉のBSE問題による「牛丼品切れ」報道は、それが日本人になじみの深い牛丼だったがために、多くの国民に、あらためて考えさせる機会を与えた。一杯300円前後の牛丼、家族みんなの満腹感に1,000円ちょっとの対価は魅惑的だ。個人的にも品切れ報道の前に家族4人で2回も出かけたが、米国産牛の白黒がはっきりとしない中での懐具合に合わせた行動は、親として軽率だったと今ごろ反省する。

  では、アメリカ政府と牛丼企業、牛丼を品切れに導いたのはどちらか。

  まず、アメリカ政府。輸出国は輸出先のニーズに合ったものを提供しなければ販売量を拡大することが出来ないのは市場原理で当たり前のこと。自動車輸出のゴリ押しでも前例のあるアメリカ政府は、全頭検査の科学的根拠を持ち出してゴネるだけではなく、まず、相手の立場を考えてしかるべきだ。

  対して企業。デフレ進行により、牛丼チェーン各社は低価格化競争で危機管理能力を麻痺させていった。主力商材でもあるにもかかわらず、仕入先の一国集中はリスク管理能力の甘さが指摘されても仕方がない。

  このように、アメリカ政府と企業の二者ともに牛丼を品切れに導いたと言える。BSEから鳥インフルエンザへニュースネタがシフトし、牛丼は再開の見通しが見えないなか、今週はニュースのメインから姿を消した。一連の報道は、いつ、どこで身の回りに降りかかるかもしれない危機への対応能力の重要さをあらためて考えさせられた。

(脱・属国)


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