主観客観
2004年11月8日

【政府の世論コントロール】

  財務省の諮問機関である財政制度等審議会と財務省は11月4日、国の財政状況が現状のまま推移した場合、@10年後に消費税率を21%まで引き上げる、A社会保障費や公共事業費などの歳出規模をすべて3分の2に削減する、のどちらかを遂行しなければ、政府の財政再建目標に達しないとの「中期財政試算」を発表した。

  消費税については、谷垣財務相がその後ミスリーディングな言い方だったと修正しながらも、2007年度からの引き上げに言明したばかり。政府がどうにかして小泉首相の任期切れ後に消費税率を引き上げたいと考えているのは明らかだ。

  政府の方針をスムーズに通すために前もって世論をその方向へと持っていこうとするのは、政府の常套手段。今回の試算も実にタイミングの良い公表であり、消費税率をスムーズに引き上げるために世論をコントロールしようとする政府の思惑があったと思えてならない。

  試算の公表で、まず世論を"消費税率引き上げやむなし"へとリード。歳出の大規模削減は地方経済への影響が大きいため、財政赤字縮小への手段としての消費税率引き上げは受け入れるしかない。そして引き上げ率についても、非現実的な21% を事前に掲げておけば、それより低い税率を提示することで容易に受け入れられるだろう。最初に高く設定しておいた商品の値段が値引きされれば、安いと感じてしまう買い手の心理と同じだ。

  今回の試算、つまり政府の世論コントロールによって、国民は10% 程度への税率引き上げを許容してしまうかも知れない。試算で謳われている"財政状況が現状のまま推移"せざるを得なくなったことに対する政府の責任を追及しないままにである。結局、国民は政府に"納得させられて"国の借金を負担させられようとしている。残された道は、税率を5% へ引き上げた後に景気後退に見舞われた97年と同じ轍を踏まないように祈ることしかないのかも知れない。

(東麻布の宮)


 【2004年冬、日本経済の重大な分岐点に】

  2004年冬、デジタル景気が再び盛り上がりを見せるかどうかに注目が集まっている。

  デジタル家電需要は、2004年夏場にDVDレコーダーや薄型テレビなどの過熱した販売合戦がたびたび報道で取り上げられたが、消費のピークはアテネオリンピック前までで、大会の後半以降はすでに反動減で消費には陰りが見られた。

  また、半導体メーカーなどでは各国での生産増強により単価下落が進行し、相次ぐ大型設備投資計画によって供給過剰が懸念され始めたことから先行き不安が台頭し、半導体、液晶関連企業などの株価は軒並み下落した。

  現在、TDB景気DI(2004年10月:43.9)は3カ月連続で悪化しており、内閣府の景気動向指数も2カ月連続で50%割れとなるなど不安定さが増幅しつつある。

  2004年冬は、景気の回復基調持続のため、内需拡大による景気の底上げが不可欠な状況となっており、ここで逃したら景気の後退局面入りも懸念される日本経済の重大な分岐点に差し掛かっていると言えよう。

  すでに、ボーナス商戦やクリスマス、年末年始商戦へ照準を合わせてメーカーや販売店の意気込みも聞こえ始めてきた。需要が依然好調であるとのアピールにも余念はなく、新商品の投入も進んでいる。この冬、デジタル景気の第二楽章で日本経済が長期安定成長へ向かうことを切に願う。

(大 和)

 【復興】

  度重なる台風上陸、新潟県中越地震で、被災された皆様へこころよりお見舞い申しあげます。

 
財務省によると、2004年10月15日までに報告された公共土木関連施設の災害被害額は7,259 億円で、すでに2003年(3,937億円)の倍近くに達している。その後の台風23号と新潟県中越地震の被害額を加算中だが、2兆円規模に達する可能性があるようだ。10年前の阪神淡路大震災での被害総額は9兆9,268億円(兵庫県推計)、それに次ぐ被害額となりそうだ。

 
政府は、今年度予算の災害復旧費726億円と予備費残2,234億円を当面の復旧費とし、2004年度補正予算案を来年1月の通常国会に提出し、不足分は補正予算で補う方針だ。一方、新潟県も、被災した住宅再建について応急的な補修費として独自に最大200万円補助する支援策を発表した。総額では100億円を超える見込み。

 
三位一体の改革で、交付金の削減により厳しい財政状況にあり、復旧、復興予算も地方自治体にとっては大きな負担だ。

 
また、本田技研工業が被災地の長岡市にあるスピードメーター調達先日本精機からの要請に応え、完成車生産の一部を2日間休止するなど、地震発生から2週間が経過したが、今後も多くの企業活動に影響が出てくる可能性は高い。生産活動の遅れから税収減も予想され、当面、被災自治体の財政は厳しい運営となる。

 
今回の新潟県中越地震はTDB景動向調査期間中に起こったため、北陸ブロック(41.9、前月比▲0.1)および新潟県(38.3、同▲0.9)の景気DIへの悪影響はすべて出ていない状況で、今後のさらなる低迷が危惧される。

 
公共事業費の削減も続いており、予算の充分でない地方にとって、復旧事業の一翼を担うのは厳しい。災害復旧に関する費用を国庫負担でまかない、早急な復興支援が急務である。

(脱・属国)


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