主観客観
2007年8月6日

【結果によらず経済停滞を引き起こす選挙】

  参院選での自民党の大敗によって安倍首相の進退問題が浮上する一方で、今後の一時的な政局混乱への不安や政策運営の停滞懸念が広がっている。

 
こうした政局不安が景気DIを押し下げる一因となったが、実は今回の選挙結果が出る前から、経済への悪影響はあったようだ。

 
具体的な企業の声をみてみると、『選挙前は公共事業がない』(工具製造、大阪府)、『選挙で公共事業の発注が遅れている』(建設業、福岡県)など、選挙前の公共事業手控えや発注遅れを指摘する企業が散見された。また、『選挙による心理的な買い控え』(貴金属卸売、東京都)を嘆く企業も少なくなく、公共事業とは一見関係の薄い業種にも影響が及んでいたことが明らかとなっている。

 
特に公共事業の発注遅れに関しては、『新年度入りした4月から各市町村に配分される予算が、選挙のある年には選挙が行われるまで止められる』ようで、『当選した議員がさも自分で予算を取ってきたかのように振る舞う』(建築材料卸売、福岡県)旨の指摘があった。

  こういう実態がある以上、選挙が行われるときは必ず短期的な経済停滞が引き起こされる。特に公共事業の依存度が高い地方圏への影響は図り知れない。

  選挙と公共事業。もちろん切り離すことはできないが、せめて経済に悪影響を与えないようにできないだろうか。政治家に、経済を停滞させる権利はないはずだ。

東麻布の宮


 【再利上げで高まる景気の下押し懸念】

 日銀が再利上げの判断に苦慮している。
 
2007年7月11日・12日に行われた日銀・金融政策決定会合ののち、エコノミストの間では「8月利上げ」の可能性が8割ともいわれ、再利上げ観測が一気に高まった。

 しかし、その後の参院選で自民党は歴史的大敗を喫し、政局の不透明感から利上げ観測がやや後退。いまでは、8月の実施は五分五分との見方が大勢を占めている。

 そもそも、景気動向は不安定な局面にある。GDP(実質)は9四半期連続でプラス成長を維持しているものの、地方圏や中小企業の停滞を背景に、景気DI(帝国データバンク発表)は悪化傾向を強めている。

 可処分所得の減少と年金不信、さらなる税負担の拡大による先行き不安の増幅から個人消費は軟調で、景気を底上げするには至っていない。消費者物価指数も当然のごとく、下落したままだ。

 こうしたなかでも、再利上げ観測が根強いのは、GDPの成長率を背景として早期の金利正常化を実現させたい日銀の焦りが見え隠れするからだ。

 2006年7月のゼロ金利解除後、再利上げはわずか1回(2007年2月)のみで、欧米諸国との金利差が縮小する気配はみられない。先行きの金融政策の自由度を確保するうえでも、利上げを急ぎたい気持ちがある。

 GDPの2007年4〜6月期の発表は、8月13日。これでマクロ経済の底堅さが確認され、次回の金融政策決定会合(8月22日・23日)までの間に政局が一定の落ち着きを取り戻すことができていれば、再利上げ実施の可能性は十分にある。

 それは、物価下落という悪材料に目をつむっての実施だ。
仕入れ値上昇の価格転嫁に苦しむ地方圏や中小企業では、一段と業績や資金繰りに悪影響を受ける可能性がある。いまだ回復途上にある景気を、さらに下押しすることが懸念される。

大和


 【地価上昇で本格化する地域間競争】

  国税庁の発表(8月1日)によると、2007年分の路線価は全国平均で前年比+8.6%となり2年連続の上昇になった。都道府県別では、昨年までに上昇していた東京・大阪・愛知・京都・千葉に加えて、北海道・宮城・埼玉・神奈川・滋賀・福岡・兵庫の7道県がプラスに転じた。また、地方圏全体でも昨年の−5.7%から0.0%の横ばいになった。

  一方で、初めて3大都市圏が日本の人口の半分以上を占めるようになったことなど、都市への人口集中が現在も進んでいる現状を考えると、一概に地価の下げ止まりが地方圏まで広がってきたと喜んでばかりもいられない。

 
景気DI(帝国データバンク)をみると、「不動産」はなんとか前月並みを維持している。

 
とはいえ、各企業が感じる意識はさまざまだ。現在の景況を「個人・法人とも売買意欲旺盛。金利上昇前の駆け込み需要もあり好調」(土地売買、福岡)とみている企業もあれば、「過当競争による収益の悪化」(貸家業、埼玉)を挙げている企業もある。

 先行きに関しても楽観できない。その最大の要因が金利動向で、「金利上昇に伴い、年収800万〜1,200万円の所得者層が新築ワンルームマンション等の投資を敬遠する動きがある」(不動産管理、東京)との指摘は、家計による貯蓄から投資への勢いが弱まるのではないかという危惧を抱いていると受け止めるべきだ。

 路線価は2007年中の土地取得に伴う税額に直結する。厳しい財政状況が続く地方自治体は、ようやく地価上昇に向かい始めた流れの中で、地場産業を活性化し、人びとの都市圏への移動をいかに思いとどまらせることができるか。

  今般の地価上昇は民間・自治体が一体となった地域間競争が一層本格化するシグナルと捉えるべきである。

なんとか王子


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