主観客観
2009年5月8日
企業活動に反転の兆し、政策的な雇用対策で自律回復を後押しへ

 2009年4月の景気DIは2カ月連続で改善した。主な要因は、企業の低価格戦略や高速道路料金の割引、定額給付金などの政策的な消費刺激による内需の下支えである。

 2カ月連続の改善は2007年3月以来2年1カ月ぶりである。この時は、『製造』のDIが47.2、『小売』のDIが41.1であり、特に「輸送用機械・器具製造」は57.5と高水準で、「機械製造」「電気機械製造」とともにDIが50を上回って全体を牽引していた。

 現在、「輸送用機械・器具製造」(15.4)、「機械製造」(15.5)、「電気機械製造」(15.7)はいずれも低水準で、『製造』は18.7と低く、『小売』(23.7)を下回っている。

 内需にやや底堅さがみられるとはいえ、対GDPの輸出比率が直近10年間で倍増するなど、外需依存度が高い日本では、製造業の改善なくして景気の本格回復はない。

 この製造業のなかで、輸出総額の2割を占める電気機械関連の生産活動にようやく反転の兆しが現れ始めた。

 TDB景気動向調査によると、電気機械の在庫調整は一般機械や鉄鋼、自動車関連業界に比べて数カ月から半年ほど進展が早い。中国の内需刺激や国内におけるデジタル家電などの需要喚起によって、生産の落ち込みにも下げ止まりの兆候がある。

 米経済には底打ち観測が表れ始め、日本もようやく下げ止まり感がでてきた。しばらくは踊り場の局面が続くとみられるが、年明けのトリノ冬季オリンピック(2010年2月)や上海万博(2010年5月)などへ向けた企業活動の復調も期待できる。

 しかし、企業業績は2004年度のようなV字回復を達成するほど楽観できる状況にはない。こうしたなかで、政策的な雇用対策の役割は大きい。政府・自治体は、巨額の財政出動が最大の効果を発揮するよう真剣に取り組み、自律回復への後押しを図っていく必要がある。

(大和)


清算主義は不況をより深刻化させる

 “清算主義”という考え方がある。不況によって非効率な企業が淘汰されることで効率的な企業だけが生き残り、経済全体がより強くなるという意味として使われる。

 不況で苦しいときにこそ知恵を絞り、新しいアイデアで苦難を乗り越えようとするのは理解できる。「必要は発明の母」という諺もある。しかし、不況時の方が好況時よりもアイデアが生まれ、新規産業が創出されやすいというのは迷信に過ぎず、シュンペーター流の「創造的破壊」に対する誤解に基づいた考え方であろう。

 私たちは過去の歴史において、不況下ではイノベーションが生まれ難いことを学んできた。ベンチャーやイノベーションは景気がいいときにこそ生まれてきたのである。

 かつて、浜口雄幸内閣の井上準之助蔵相は大恐慌中に旧平価での金本位制への復帰を行い、昭和恐慌を一段と深刻なものとした。また、大恐慌時の米フーバー大統領は清算主義的な政策をとった。そして、投資銀行の影響を軽視した米ブッシュ政権はリーマン・ブラザースの破綻を容認した。その結果、世界同時不況は現実のものとなってしまった。

 政府や政策当局が銀行に公的資金を注入し、中小企業への資金繰り対策を実施するのはなぜか。それは本来であれば倒れる必要のない健全な企業が倒産することを防ぐためであり、決して、非効率な企業の延命をはかることが目的ではない。

 不況時には企業の淘汰を促すべきでなく、経済全体を底上げすることが経済政策上の基本原則である。その結果、非効率といわれる企業も社会に併存しても構わない。清濁併せ呑むくらいの懐の深さが日本経済には必要だろう。それでも日本の資本主義社会には「適者生存」の摂理が生きていることを、もっと信じていいはずだ。

(なんとか王子)


【「かんぽの宿」譲渡問題の本質は】

 ここ数カ月にわたってマスコミを賑わせていた「かんぽの宿」譲渡問題に関する鳩山総務相の一連の言動に強い不信感を覚えた。この譲渡問題の本質は、日本郵政がオリックスのグループ企業に施設を安値で売却することではなく、そもそも、なぜ、このような多くの資産価値の低い施設を、2,400億円もの巨額の整備費をかけて造ってしまったのかを真の問題ととらえるべきである。

 今回の譲渡条件では、施設従業員の雇用も継続することになっている。民間企業のオリックスとしては、これまで年間数十億円もの赤字を出し続けている事業と、約3,000人といわれる人件費負担を抱え込むリスクをとって入札に参加した。入札は競争入札で行われており、オリックス以外の複数の企業も参加している。入札の最終審査段階での経緯について一部不透明さが指摘されてはいるが、もっと高い資産価値があると考えた事業者がいれば、入札当初からオリックスより高い価格で入札する事業者も現れたであろう。

 これに対し鳩山総務相は、日本郵政に対してオリックスの宮内義彦会長が政府の規制改革会議で議長を務め、かんぽの宿などの公的宿泊施設の売却・廃止を提言した経緯に触れ、施設売却に同社が関与すべきではないとする主張を展開、さらには、日本郵政が進めている東京丸の内の中央郵便局ビルの立て替え工事にまでも異議を唱えた。

 これは小泉構造改革路線を白紙に戻し、既得権を取り戻したい官僚の意向を汲むと同時に、衆議院選挙を前に郵政票を期待する政治家としての思惑が一致したパフォーマンスであると感じた。

 無責任な政治家や役人たちが、国民の税金を無駄遣いしながらこのような施設を造りあげ、誰も責任を取らない事実が問題の本質である。政治家には、今後、二度と同様の問題が起きることのないような仕組み作りを真剣に議論して欲しい。

(Caddis)


地銀再編による地域経済への影響懸念

 TDB景気動向調査による2009年4月の金融機関の融資姿勢DI(0〜100で50を下回れば消極的、上回れば積極的)は46.3で前年同月(54.5)との比較では、その低水準ぶりが目につく。特に、小規模企業(42.9)は全体平均からさらに3.4ポイント下回る水準であり、厳しい資金繰り状況となっている。

 2008年10月末からの緊急保証制度による保証承諾金額の2009年4月末までの累計が10兆円を突破したが、年末需要を迎えた2008年12月のピーク以降は大きな伸びは見られない。また、企業側からみた金融機関の融資姿勢DIを見ても、その効果は存分に出ているとは言い難い。

 それよりも「緊急保証制度の融資効果で倒産は小康状態であるが、景気が回復しているわけではないので、いずれ企業のキャッシュフローは厳しくなってくる」(事業者向け貸金業)と今後を懸念する声もある。

 昨年からの金融危機からの保有株式下落による減損や与信関係費用の拡大により、メガバンクの2009年3月期決算は下方修正が相次いでいるなか、各行は新規の貸し出しよりも増資による資本増強を優先課題としている。

 しかし、金融危機の悪影響による金融機関の資本強化の動きはメガバンクにとどまらない。地銀では、生き残りをかけた再編の動きが活発化している。

 今後も地銀間での再編が進めば、必ず融資先企業の選別が始まる。選別は新たな倒産の増加となり、地域経済への悪影響が懸念される。

(脱・属国)


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