主観客観
2009年7月3日
政治の混乱に日本の縮図をみる

 2009年7月1日、麻生首相は幹事長など党役員人事の刷新を断念した。実現したのは、与謝野財務相、佐藤総務相の兼務を解くことによる2閣僚の補充にとどまり、新役員に取りざたされていた町村信孝氏や舛添要一氏、菅義偉氏、地方分権担当ポストへの入閣が噂されていた東国原英夫氏らにも動きはなかった。

 人事権を衆院解散前の最大のカードとする意気込みをみせていた麻生首相であるが、森喜朗氏ら周囲の圧力が強かったとはいえ、国民に対する目新しさも麻生首相の目指す政権運営の方針も示せなかった。内外の圧力に屈し、人事もままならない状況に対して首相の求心力低下、政治の混乱を批判する報道は最高潮に達しつつある。

 しかし、小泉政権のあとを引き継いだ安倍首相、福田首相、そして麻生首相と3年続けて現在の状況に陥っている日本の政治を、私たちはバッシングするだけでいいのか。

 近年の首相の求心力低下、組織の弱体化、政治の混乱に、日本の縮図をみる。ミクロでみれば、自己責任や自分の身は自分で守るといった意識が蔓延した末、横のつながりが希薄化し、地域社会が崩壊。終身雇用も崩れるなど、多くの面で社会における帰属意識が低下している。マクロでみれば、外交上、日本の存在や発言力は中国の成長に伴って急速に低下している。数少ないチャンスであった環境問題においても、日本の都市名を冠した京都議定書でイニシアティブをとることができず、ポスト京都議定書では、米中欧を3極としていく兆しが表れている。

 政治力の低下や混乱を政界の話に単純化するのではなく、日本そのものの問題とし、危機感を持つ。問題を一朝一夕に変えていくことはできないが、現状を憂え、批判するだけではなく、問題意識を持った多くの地域社会や学生、労働者などが目標を持って行動していくことが重要である。この混乱期は、近い将来、新たなリーダーを中心として21世紀を歩んでいくための日本の正念場である。

(大和)


家計消費は日本経済を知る宝庫

 7月1日、省エネ家電の購入を促す「エコポイント」制度について、獲得ポイントの登録や商品交換の受付が始まった。政府の経済対策として導入された同制度であるが、量販店をはじめ家電商戦が活発化、景気回復への弾みが期待されている。

 家計調査(二人以上世帯、6月30日発表、総務省)によると、5月の実質消費支出は前年同月比0.3%増で、2008年1月以来16カ月ぶりの増加であった。では実際、エコポイントでどれくらい消費支出が増加したのかが気になるところ。同調査をみると、同制度が開始されたことでテレビが前年同月比+145.2%の大幅な増加となり、寄与度では+0.38%ptと消費支出全体を大きく押し上げている。テレビをみる限り、効果があったといえそうだ。

 他方、同制度の対象商品である電気冷蔵庫やエアコンはそれぞれ−23.7%、−34.0%といずれも支出は減少していた。ただ、これらは単価自体の上昇がみられる。消費者は環境対応と同時により高付加価値の商品を求める購買行動をとり、商品購入までの時間を多くかけていた可能性がある。また、出荷量は増加しており6月以降の動向を注視しなければならない。

 5月の消費支出に影響を与えた要因はまだある。新型インフルエンザの流行である。例えば、備蓄用を含む米(3.1%増)やうがい薬を含む他の外用薬(28.7%増)、マスクを含む保健用消耗品(71.1%増)などで増加した一方、国内パック旅行(15.7%減)や外国パック旅行(13.1%減)は大きく減少した。特に、保健用消耗品は寄与度でも+0.13%ptと大きくプラスに貢献している半面、国内パック旅行は−0.17%ptと大幅なマイナスであった。

 2009年5月の消費には、このほかにも高速道路料金の割引や定額給付金といった政策面に加えて、休日が前年よりも多く、また例年より暑い日が多かったことなど、さまざまな要素が重なっていた。家計の消費動向を追いかけていくと、消費者行動やライフスタイルの変化が如実に表れてくるようで、統計調査を読む楽しみを改めて感じる。

(なんとか王子)


GMとオーバーラップする百貨店業界

 百貨店業界の売り上げ減少が止まらない。日本百貨店協会によると、2008年の全国百貨店売上高(店舗調整後)は前年比4.3%減となった。売上高の前年比マイナスは1997年から12年連続である。もともと消費者の百貨店離れが進んでいたのに加え、リーマン・ショックが襲った2008年後半以降は消費低迷が直撃、前年同月比を大きく割り込む月が続いている。直近の2009年5月の売上高も前年同月比12.3%減と2ケタを超える大幅なマイナスを記録した。

 ここ数年、全国展開する大手百貨店各社は相次いで経営統合し、業界再編を進めている。しかし、コスト削減につなげるための不採算店舗の閉鎖など、守りの施策はみられるものの、売上拡大につながるような攻めの施策については、今のところ目立った効果がでているとは言い難い。

 また、地方の百貨店は、北海道の老舗である丸井今井の倒産が象徴するように、大手以上に厳しい経営環境に置かれている。今後、地方の百貨店は大手の支援を受けるか、傘下に入るなど、単独での生き残りを諦めるケースが増加するだろう。

 消費者の変化をとらえられず、高コストと指摘される経営体質の変革も怠たり不振を続ける百貨店業界の現状をみていると、破たんしたGMとオーバーラップしてしまう。今後も短期的には雇用・所得環境の悪化による消費の減少、中長期的には少子高齢化の進展など、百貨店業界にとって逆風が続くだろう。しかし、この不況下でも確実に消費者ニーズの変化をとらまえ、大きく売り上げを伸長させている小売業者も少なくない。

 百貨店各社はこの大不況を変革の最後のチャンスととらえ、プライベート・ブランド商品の企画や価格の見直しなどを含め、これまで百貨店としてタブーとされているような事もゼロから見直すことで、消費マーケットの変化に対応した商品の品揃えに積極的に取り組んで欲しい。

 百貨店の多くは駅前の好立地にある。特に地方では百貨店の倒産や店舗閉鎖によりその灯りが消えると、その町全体の景況感をも悪化させる大きな影響力を持つ。百貨店の灯りが消えることなく、いつまでも町を明るく照らし続けることができるよう、百貨店業界の復活に期待したい。

(Caddis)


本格回復にほど遠い不動産需要

 景気低迷による地価への悪影響が7月1日国税庁発表の全国路線価(2009年1月1日時点)で明らかになった。全国の路線価は前年比5.5%下落、4年ぶりの前年比マイナスとなった。2008年9月のリーマン・ショック以降は外資ファンドの撤退や景気低迷による事業所の縮小・撤退が増加したことで、特に、福岡(前年比8.6%減)、東京(同7.4%減)、愛知(同6.3%減)など大都市での地価下落が目立つ。

 また、2009年5月の全建築物の着工床面積は、前年同月比34.0%の大幅減となり7カ月連続で減少、民間非居住の用途別をみると、9用途中で前年同月比プラスは「金融、保険業用」同13.1%増、「医療、福祉用」同9.7%増のみで、用途別で割合の大きな「製造業用」同66.9%減、「卸売業、小売業用」同50.2%減と大幅な減少となっている。

 前年同月比増加した「金融業、保険業用」は新規の建築需要の下支えに期待しようにも、再編が控えている金融業界では、再編後の合理化策で拠点統廃合が進むことの可能性の方が高そうだ。

 主要都市の地価動向に先行的な指標である「主要都市の高度利用地地価動向報告(2009年度第一四半期)」によると、三大都市圏では前回調査比6%以上(年率換算21.9%以上)下落した地区が前回35地区から41地区(構成比34.7%)に拡大、引き続き都心部での不動産価格の下落が続いていることが確認できる。

 2009年6月調査の「不動産」のTDB景気DIは前月比1.9ポイント増の24.6となり6カ月連続で改善したが、前年同月水準(30.6)にはほど遠い低水準にある。「集客は戻りつつあるが、売り上げにはあまり結びついていない」(不動産仲介)との声も寄せられており、不動産需要の回復は、国内景気の本格回復の道筋がみえてくるまでは厳しいという現状がみえる。

(脱・属国)


ビジネスモデルの変革を問われる排除措置命令

 6月22日、公正取引委員会は、セブン−イレブン・ジャパンに対し排除措置命令を行った。弁当やパンなどの値引きに制限をかけることは、優越的な地位の濫用にあたるという内容である。現行では、コンビニエンスストアにおいては値引きを行わないことでブランドイメージを作り上げていたが、期限の迫った商品は店頭に置かず廃棄していた。しかし、廃棄コストは加盟店が全額負担するため、経営上の大きな足かせとなっており、一部の加盟店からは見切り販売の容認を求められていた。

 排除命令が出された当日のセブン−イレブン・ジャパンのリリースでは、見切り販売制限は日常的な事象ではないということや、他の加盟店から反対意見があることにより、今回の命令の全面受け入れはないという見解であった。また、見切り販売の弊害として、ブランドイメージの毀損や価格競争に巻き込まれる可能性を示唆している。

 一方で、本部は今回の命令を受けて7月より廃棄コストの15%を負担するとしているが、見切り販売の推奨は行わず、加盟店オーナーの判断に任せるとしている。しかし、見切り販売の制限という言葉なき圧力が存在するということは明らかである。

 この命令はセブン−イレブン・ジャパンに限ったことではない。各コンビニエンスストアのビジネスモデルに関わる命令である。貧困問題や環境問題などが現存するなかで、日本は環境への取り組みにおいて世界のリーダーとなるという目標を掲げている。時勢が現行のビジネスモデルに環境問題への対応を取り入れることを求めている以上、消費者の生活に深く根ざしている企業として大量廃棄を推奨することは懸命な判断とは言えないのではないだろうか。

 取扱商品・サービスの多さは消費者にとって大きな魅力である。2009年6月からは改正薬事法の施行により登録販売者の資格保持者がいれば大衆薬販売が可能になるなど、販売対象商品が広がり、コンビニエンスストアの業態は拡大し続けている。現在、2008年7月から全国導入されたtaspo効果により、既存店ベースでは13カ月連続で売り上げを伸ばし続けているものの、この先も継続して増収する見通しはたてられない。

 見切り販売によりコンビニエンスストアの魅力が失われるとすれば、消費者の廃棄量の削減がエコにつながるという意識が低いためとも考えられる。さすれば、コンビニエンスストアだけでなく消費者のエコ意識を試されているとも考えられるだろう。

 ビジネスモデルの維持のために、地球環境を壊すことはできない。

(小夏)


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