主観客観
2009年10月5日
幻と消えた東京オリンピック、冷めた敗北を教訓に

 2016年の夏のオリンピックの開催地がリオデジャネイロ(ブラジル)に決定した。南米初のオリンピック開催であり、地元は歓喜に沸いた。この様子を報道で眺めながら、もともと日本に、いや、東京に勝算はあったのか、改めて疑問に感じた。開催地決定の判断基準には、資金やインフラなどがあるが、必要不可欠なのは候補地におけるオリンピック開催への強い思いである。

 しかし、日本では開催への旗振り役にはその情熱があったとしても、国民や都民のなかでは最後までそのようなものが幅広く醸成されることはなかった。東京は世界4候補地のなかで、市民の支持率が56%と際立って低く、街の声でも「開催されればまあいいかな」といった程度の反応が少なくなかった。

 アジア圏では北京オリンピック開催から間もないことや、リオデジャネイロが南米初となること、いまなぜ東京開催が必要であるかという問いに対して明確な説得力をもたせることができなかったことなど、東京にとって不利な条件がそろっていた。こうしたなかで、大方の予想通り東京が敗退したわけであり、その後、市民から悔しさをあらわにするような声はほとんど聞かれていない。

 国際舞台でのアピールや地域活性化への貢献などを考えると、日本の立候補地は東京ではなく大阪や福岡、広島のほうがより意義深いものとなったに違いない。

 都知事は今回の敗因を「IOCの政治的なもの」としたが、それでは多額の資金を投じても同じ過ちを繰り返すのみである。目的や情熱なき戦略に賛同は得られない。今後、日本であれば、国連が核の脅威に対して動きを活発化させるなかで、たとえば核不拡散や世界平和を掲げて広島が立候補するのは世界にとっても意義あるものとなるだろう。

 グローバル化、ボーダレス化が進む国際社会において、日本は今回の東京の冷めた敗北を教訓にして、経済だけではなく、世界平和や環境問題などでもリーダーシップの発揮に生かしていかなければならない。

(大和)


国際的発言力を高める戦略

 10月3日、アイルランドが国民投票でEUの新たな基本条約であるリスボン条約を批准した。これによりリスボン条約は2010年にも発効されることがほぼ確実となった。EUはマーストリヒト条約によって1993年に誕生し、その後、アムステルダム条約やニース条約を経て現在の姿となった。そして、リスボン条約ではEUの大統領や外相級ポストが創設されることになる。

 EUはこれまで代表となる人物がおらず、誰と話をつければいいのか分からない、ということが国際的な問題となっていた。大統領、外相の誕生により、今後、巨大な市場や人口を抱えるEUの発言力は一段と増していくであろう。

 さらに、主要国首脳会議(G8)はその役割を終えようとしている。G8は1975年に日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツのG5として始まった。その後、1986年にイタリアとカナダが加わりG7に、そして1998年にロシアの参加でG8となった。これに変わる枠組みとしては、G20が最有力となっている。しかし、議論を深めるには20カ国という数は多すぎるのではないか。

 そのため、G7ないしG8を再編成すべきだという意見がある。その出発点は、仏、独、伊、英に変わって、EUの参加とすることである。EUは参加枠が減るものの、アメリカを上回る経済圏を代表する発言力は大きい。そこで空いた3枠に新興国が入ることになるが、主に3案が出ている。第一は、EU、日、米、中国、インド、サウジアラビア、露か南アフリカというもの。第二は、EU、日、米、中、サウジアラビア、南アフリカ、ブラジル。第三は、経済規模(購買力平価換算)の上位8カ国、EU、米、中、日、印、露、ブラジル、メキシコである。

 ただ、アジアから3カ国が入ることが問題になろう。中国だけでなく、今後は印が日本の経済規模を上回ることもありうるのである。日本は戦略的に国際社会における発言力を高めていかなければ、G7/G8から脱落する可能性も否定できない。鳩山首相は先の国連気候変動首脳会合において、温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減を打ち出した。これは産業界にとっては大きな試練になりかねないが、国益を考えれば一つの戦略として評価できるのではないだろうか。

(なんとか王子)


少子化を逆手にとった待機児問題の解決法

 厚生労働省は2009年4月現在、保育園の入所待ちをしている待機児童数が2万5,384人にのぼり、前年同時期からの増加数が2001年の調査開始以来、過去最大となったとの調査結果を発表した。前年からの増加率も過去最高となっており、景気悪化に伴い専業主婦だった女性が働きにでるケースが増大する一方で、保育体制の整備が追いついていない状況が浮き彫りになった。

 政府は2008年に「待機児童ゼロ作戦」と称して、2017年までに保育所などの受け入れ児童数を100万人増やすなどの目標を設定した。また、当時の福田首相の指示で、2010年までの3年間を集中重点期間とし、保育所の整備に加え、自宅で子どもを預かる「保育ママ」の増員を進めるとしていたが、待機児童問題の状況は好転していない。

 今回の選挙で政権交代をなしえた民主党のマニフェストにも、待機児童解消策として保育ママの増員があげられている。たしかに、補助金の額を増やすことなどで、保育ママになろうと言う人がある程度は増えるとは思うが、自宅で他人の子供を世話することの責任の重さから、待機児童問題の解決につながるまでの増員は期待できないと思われる。また、子供を預ける側も、対個人に預けることにはかなりの抵抗があるため、その効果は限定的で、かつ定着するまでに多くの時間がかかるだろう。

 そのコストと時間を考えると、少子化により増加している小中学校の空き教室や、廃校を利用した保育所の増設をピンポイントで進めたほうが効果が大きく即効性も期待できると思う。景気の回復力が鈍く、失業率も上昇している状況下、新政権にはこの問題についてスピード感のある対応を求めたい。

(Caddis)


政策に振り回されるタクシー業界

 小泉政権下の2002年2月の道路運送法改正による規制緩和以降、タクシーの台数が増え、低賃金にあえぐ運転手の労働環境の悪化が問題となっている。

 2009年9月に東京の大手タクシー会社の国際自動車が、運転手への超過勤務などの道路交通法違反から事業許可が取り消されたニュースは記憶に新しい。リーマン・ショック後の急速な景気低迷に加え、新規参入や増車で顧客争奪競争は激化している。

 「タクシー事業者数及び車両数」(国土交通省)は、規制緩和2001年度末の5万3,163事業所、台数25万9,033台から、発表されている最新の2007年度末では、事業所数が対2001年度末比8.4%増の5万7,613事業所、台数は同5.6%増27万3,529台となっている。

 全国ハイヤー・タクシー連合会がまとめた「安全・安心なサービスを提供するためのタクシー事業制度に対する提言」(2008年10月)では、過剰台数を算出し、29.4%、約6万5,000台の減車により、結果、乗務員の年収が約24%増加すると試算している。

 2009年通常国会で成立したタクシー適正化・活性化法(特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法)が3年間の時限立法として2009年10月1日施行された。同法により、供給過剰の進行等によりタクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できていない特定地域では、地方公共団体の長は、国土交通大臣に対して、特定地域の指定を要請することが可能。特定地域では、タクシーの適正台数を計算し、超える場合は原則として増車や新規参入を認めない。

 今回のタクシー適正化・活性化法により、新規参入や増車の規制により、減車も可能となるが、事業者が減車に応じなくても罰則がないため、実際に減車が実現するかどうかには疑問が残る。

(脱・属国)


教育不信を解消する双方の歩み寄り

 子供の服装や髪型を注意されたことに腹を立て、教員に暴行を加えた。記名を頼んでいた子供の持ち物に教員が名前を書いたら、親から「ネットオークションで売れなくなった。弁償して欲しい」というクレームが発生した。これらはモンスターペアレントと呼ばれる親からの苦情である。このような学校側でも手に負えない案件が増加したため、東京都教育委員会が「学校問題解決サポートセンター」を設置、学校への不満の対応窓口が設けられた。

 そもそもモンスターペアレントとは自己中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者のことをいう。モンスターペアレントが増加した背景には「親」、「教員」ともに悪行や不祥事の報道が目立ち、お互いに尊敬できなくなっている事で、双方に信頼関係が置けない教育不信に陥っているという影響が大きいとみられる。そのような親、教員に育てられた子供はどうなるのであろうか。反面教師という言葉があるが、周りが反面教師ばかりではまっすぐに育つものも育たない。最終的に本当の被害者は子供となる。

 モンスターペアレントが語られる際には、親側のモラル欠如という面からのアプローチで展開されることが多いが、学校側にも対応方法はあると考える。例えば、ケーススタディを保護者会などで行い、授業を妨害するような事があったら児童にはどのような対応を行うかなどを事前に提示することができるだろう。

 かつて学校は「学級王国」と呼ばれ、担任が王であり児童が国民であるという考えがあった。現在、その傾向は表向きにはないとはいえ風潮は根深く、学校の指導法に保護者が口を出すべきでないと考える教員は少なくない。学校内での指導法についての相互理解が得られていない可能性がある。

 家庭内でどのような教育方針を立てて育てていこうかを話し合われるのと同様に、学校と親との間でも合意のある教育方針を立てる事が求められる。学校と親の間で考え方や事情を理解し合うことで、双方の主張に歩み寄りがみられればモンスターペアレントの減少に益するのではないだろうか。

(小夏)


このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.