主観客観
2010年7月5日
型は形にあらず

 日本相撲協会が賭博問題に揺れている。すでに同協会に自浄能力はないと判断され、現在、外部有識者による特別調査委員会が事態の収拾にあたっており、親方や力士への解雇処分など、厳しい対応を取り始めている。

 これまでも相撲部屋の世間とはかけ離れた慣習に批判が集まってきたが、そもそも相撲とは、古事記にも記述のみられる神事が起源とされており、いまも各地に残る祭りとも関係が深い。そのため礼儀作法が重要視され、さまざまな動きには伝統的な型をもっている。相撲道と言われるゆえんでもある。

 ところが、興業が重視されるあまり、歴史と伝統ある型が長い時間が経過するなかで、外見だけを真似る形に成り下がってしまっているように思われる。すべての型には、本来、それぞれの意味があったはずであり、そこが正しく継承されていないのではないかと感じる。

 どのような組織でも運営する以上、お金とはきってもきれない関係にあり、政治的な思惑などさまざまな利害関係が複雑に入り込む。こうしたなかで、もし本道から外れるような状況に陥ったら、そこでは原点に立ち返って見直しを図っていくことが重要だ。
 日本相撲協会も形だけ整えるのではなく、今後、生まれ変わるであろう新体制やルールに本来の意味と魂を込めて、改革を実行していくことが不可欠である。

(大和)


消費税は内容の議論を求める

 7月11日に実施される参議院選挙では消費税が争点のひとつとなっており、各党は侃々諤々と意見をたたかわせている。消費税率について選挙で真正面から取り上げ、与野党問わず賛否が入り乱れるのは初めてのケースであろう。ただ、実際の消費税率の引き上げまでには数年が必要だ。というのも、消費税には低所得者ほど相対的な税負担が増加するという逆進性の問題があり、それを緩和するための制度整備に時間がかかるためである。

 具体的には、“給付付き税額控除”と“軽減税率”が考えられている。しかし、両制度の導入では、給付付き税額控除には税と社会保障の共通番号制度(社会保障番号や納税者番号など)が、軽減税率にはインボイス方式が重要になる。給付付き税額控除とは、基礎的な消費にかかった税額相当分を納税者に返還するものであり、返還する額は所得に応じて決まってくる。そのため、個人の所得を正確に把握し、納税と給付に利用できる共通番号制度が欠かせない。一方、軽減税率とは、食料品などの生活必需品に適用する税率である。インボイス方式は欧州など軽減税率を採用している国が導入しており、商品により異なる税率が課され税額計算が煩雑になる軽減税率にはインボイス方式の採用が望ましい。

 過去、消費税は政治の舞台でたびたび議論されてきた。1979年に大平正芳首相(当時、以下同)は“一般消費税”の導入を検討したものの大反対にあい撤回したうえ、総選挙で大敗した。1987年に中曽根康弘首相は“売上税”を断念。そして1989年に竹下登首相が“消費税”を導入したものの、支持率の低迷に加えてリクルート事件も重なり退陣した。1994年には細川護煕首相が消費税を廃止し7%の“国民福祉税”の創設を発表したものの、翌日には撤回、退陣の契機となった。1997年に橋本龍太郎首相が消費税を3%から5%に引き上げたものの、金融危機等も重なり翌年の参院選で大敗、退陣に追い込まれた。

 共通番号制度はこれらのすべての機会で議論された。インボイス方式は、1989年、1997年、そして2004年には消費税総額表示方式の導入時にも議論された。しかし、いずれも導入は見送られてきた。理由は国民が強力に反対したためである。つまり、逆進性の解消や生活必需品への軽減税率の適用は、われわれ日本国民が導入しないことを選択してきたのである。とはいえ、現在は消費税率を10%に引き上げるという主張が出ている状況であり、いつまでも結論を先送りすることはできない。実施時期や税率も大切だが、もっと内容、方法論の議論を分かり易く主張して欲しいところである。

(なんとか王子)


役員報酬開示はプライバシーの侵害?

 2010年3月期の有価証券報告書から、上場企業の役員で1億円を超える報酬を受ける場合にはその報酬額を個別に開示することが義務づけられた(企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令)。この役員報酬の個別開示を巡っては、これまで経済界はプライバシー侵害などの問題があるとして猛反対してきた。しかし、日本以上にプライバシー情報の開示に慎重なアメリカやヨーロッパで既に実施されている制度であり、経済界が主張するプライバシー保護の観点からの反対論は説得力に欠けよう。

往生際が悪いとしか思えないが、なかには何とか開示から逃れようと、期限までに報酬を1億円以内に減額することを検討していた企業もあるとされる。しかし、多くの株主から出資を受け経営を託されている責任ある上場企業の役員である以上、堂々と個別報酬を開示して説明を尽くすことで、株主に報酬の妥当性を理解してもらう事を避けるべきではない。経営の透明性に繋がる情報開示を避けたいのであれば、思い切って上場を廃止し、未上場企業として生きる道もある。

高額報酬であっても、厳しい経済状況下、的確な経営判断で好業績をあげ、株価も堅調な企業であれば株主も納得できるはずである。他社に先んじて国内上場企業でいち早く社長以下3名の個別報酬の開示を行った資生堂の2010年3月期決算は、景気低迷で売上高は落ち込んだものの、コスト削減等の企業努力が奏功して増益決算となっている。この企業努力が評価されたためかどうかは推測の域を出ないが、今のところこの3名の報酬が高額すぎるとの批判は聞かれていない。むしろ、1億円未満で開示基準にあたらない副社長の報酬をも、代表取締役という職務の重要性から公表した同社の積極的な情報開示姿勢が高い評価を得たようだ。

一方の株主側も、情報開示を受け、やみくもに役員報酬を削ろうと考えるのではなく、当該企業の業績、同業他社の状況、役員の手腕やカリスマ性なども勘案しながら、報酬の妥当性を判断していく必要があるだろう。

(Ashes to Ashes)


国民の声に耳をすませて

 7月11日に投開票が行われる参議院選挙には従来の参院選とは違った緊張感が漂っている。というのも、現連立政権になり始めての国政選挙であり、昨年の政権後退以来の国民の声を聞く機会だからである。
 各党の打ち出した公約のなか、民主党が「Manifesto2010」で提唱した10大項目のうちまず挙げているのが「ムダづかい 行政刷新」と「政治改革」である。前者の中には国の総予算の全面的な組み替えをさらに徹底することや事業仕分けなどの手法を通じた全特別会計の見直しを、後者には議員定数や経費の削減が記されている。

 2010年6月のTDB景気動向調査特別企画「参院選に対する企業の意識調査」にて「行政改革による無駄の洗い出し」を推進すべきと考えている企業が1万1,257社中9,564社、構成比85.0%となり、非常に多くの企業が無駄の洗い出しを望んでいる事がわかった。企業からの声をみると、「事業仕分けをさらに強化し税金の浪費を徹底的に洗い直す。公務員の天下り・渡りを撤廃し、そのうえで税制の見直しをする必要がある」(飲食料品卸売、栃木県)など、無駄の洗い出しは大前提として行うべきであるといった内容が多い。

 財政危機といわれる状況にあるなか、消費税率の引き上げなど国民負担が増すことに抵抗がありつつもやむなしと考える企業も多い。しかし、国民負担を増やす前に削れるところは削らなくてはいけないのである。戦後約65年の間、築き上げられた現在の行政は、幾度とない競争や不況を乗り越えてきた国民の目から見て、非効率や不採算な部分があるのは事実である。それを一部とはいえ白日のもとにさらしたのが事業仕分けであった。しかし、これは新しい政策としてではなく、常に行っていかなくてはいけない。

 先の衆院選で政権交代を望んだのは国民から過去を断ち切った新しい政治というものを創造して欲しいというメッセージであったように感じる。次の参院選での結果をどのようなメッセージとして連立与党が受け取るか。国民の期待を背負う以上、結果だけではなく国民の声に耳をすませてほしい。

(小夏)


静かに告げられた国産ファイル圧縮形式の開発終了

 国産ファイル圧縮形式LZHの開発終了が開発者から告げられた。 LZHは1980年代のパソコン通信やフローピーディスクでのデータのやり取りが主流だった時代から、国内はもとより世界で幅広く利用されたファイル圧縮形式である。1990年代になりハードディスク容量の増加、インターネットの普及が進むなかでも広く利用された。国内では個人のみならず企業でも利用され、事実上最も利用されていたファイル圧縮形式といっても過言ではない。

 LZHの普及の背景には現在世界で主流となっているファイル圧縮形式であるZIPの歴史を紐解かなければならない。当時ZIPを利用するために必要であったソフトは有料であった。また、ZIPファイルは当時のMac OSとWindows OS間での相互利用ができなかった。一方、LZHは有料・無料ソフトのいずれでも利用が可能で、Mac OSとWindows OS間のデータの利用も可能であり、1990年代に企業で使われるパソコンのOSが業務や業種により異なっていた時代あったことも手伝い、幅広く利用された。

 そんなLZHが今年6月5日、開発者の宣言によって開発の終了が告げられた。 LZHは、当初からファイル名にUnicodeが利用できないことや、暗号化機能がないことなどの問題点が指摘されていた。さらにZIPが現在のMac OSやWindows OSで事実上無料利用ができるようになったこともあり、利用が縮小傾向にあった。
開発終了の要因として開発者は、LZHが 多くのウイルス対策ソフト・システムが検疫できないことを大きな理由として挙げている。

 しかし、これだけ国内で普及したファイル圧縮形式がほぼ個人に近い開発者や関係者に支えられていたことはあまり知られていない。技術や知識は一朝一夕には発展しない。LZHの開発終了は、優秀な技術や知識の発展をサポートする仕組みを整える重要性を社会に投げかけているのではないだろうか。

(きりん)

クールビズの次に

 環境省は、温室効果ガス削減のため、2005年の夏より冷房時の室温を28℃にしても、オフィスで快適に過ごす「クールビズ」を提唱している。今回の特別企画「環境問題に対する企業の意識調査」では、すでに開始している企業は59.1%と前年同時期より3.4ポイント増加し、クールビズが浸透していることがわかる。通勤時などでもノーネクタイ、ノージャケットの男性をよく見かけるようになった。

 このように「クールビズ」が一定程度定着したことを受け、環境省は新たなCO2削減のライフスタイルとして6月21日から早寝早起きの朝型生活「朝チャレ!(朝型生活にチャレンジ)」を呼びかけるキャンペーンを始めた。「朝から、気持ちよく始めるエコ。」「夜には、ゆっくり休んでエコ。」をテーマに、朝は早く起きて夜は早く寝ることで、不必要な夜のエアコン、テレビ、照明などの電力消費を抑えるとともに、健全で充実したライフスタイルを推奨している。朝型生活で電力の使用を減らし、地球温暖化防止に役立てるのが狙いで、日光で過ごす朝の時間を1日当たり1時間増やし、1日1時間、夜の電気使用を減らした場合のCO2削減効果は、平均的な家庭の場合、照明による1年間のCO2排出量の5分の1にあたる約85キログラムを削減できるとしている。

 多くの人にとって朝に1時間早く起きることは夜1時間長く起きていることより難しいことであるが、朝型生活は時間の有効活用や健康にも良く、自分にも地球にとってもプラスの習慣だ。クールビズの服装だけにとどまらず、朝の涼しい時間帯に趣味や健康づくりを行ったり、業務を行うなど、生活習慣から温室効果ガス削減に取り組むのもよいことだと思う。クールビズで服装を変えた後は、地球のため、また業務の効率化や健康のためにライフスタイルも変えてみるのはいかがだろうか。

(撫子)

目立つ学校IT化の遅れ

 社会では、メールでの業務連絡がごく普通で紙での配布は廃れつつある。紙で配布しようものなら資源・保存場所・履歴管理・検索の手間を指摘される時代だが、社会の動きに比べて、小・中学校ではIT化の遅れは目に余る。
 自身の子供たちも公立中学校に通っているが、配布される伝達事項は、定期配布のクラス便り、学年通信、学校便り、PTA通信、このほか不定期に配布される保護者通知、集金連絡、行事連絡など、月に10枚は下らない紙が配布されている。作成する先生、持って帰らないといけない生徒、目を通し綴らなければならない保護者、3者ともに大変だ。

 連絡事項だけではない。IT化の遅れは、定期テストの管理など学習面の進捗把握の妨げにもなっている。定期テストでは範囲内の問題の正答が返却されるだけで、継続してどこに自分の弱点があるのかの判断を把握できない。結局は塾や模擬テストのきめ細やかな分析に頼るほかない。学習面だけでなく生活面の出欠表の管理、これらを総括した成績表の管理も一部手書きであることも無駄だ。
 多くの学校では、いまだに紙による伝達方法が多くを支配していること。このことで、先生、生徒、家庭ともに合理性に欠けることが主流となっている。

 また、携帯電話の活用では親への緊急連絡網レベルにとどまり、基本的に生徒の携帯の所持が禁止されている場合が多いなか、2010年4月に須磨学園中学・高校(神戸市須磨区)が使用を義務づける携帯電話を導入して話題になった。ウェブサイトの利用時間や閲覧に厳しい規制を設けることで、学校と生徒との関係を密にすることを目的としている。生徒個別の積極的な指導・関与が可能となり、情報教育に取り組めるようになった。

 IT化の進展は、学校裏サイトの誹謗中傷という負の部分が取り上げられがちだが、IT化による正の部分がはるかに大きいだろう。生徒1人1人にMyページを作成し、出席状況から、学校からの伝達事項、成績管理があってしかるべきだ。
 未成年は友人関係、学業、社会に多くの不安を持っている。そんな多感な時期に、悩みを他の生徒の目を気にすることなく手軽に相談できるのが、日常生活で慣れ親しんでいるパソコンや携帯電話なのではないだろうか。

(電書鳩)


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