2023年の注目キーワードに関するアンケート

企業経営者が選ぶ2023年の注目キーワード、
「ロシア・ウクライナ情勢」がトップ
~ 「原油・原材料価格」「電気料金」「円安」のコスト高関連ワード続く ~

2022年も残すところ1週間を切った。今年を振り返ると、年初から新型コロナウイルスによる行動制限が行われたほか、ロシアによるウクライナ侵攻と暗い話題が続いたが、3月からはまん延防止等重点措置が全面的に解除され、イベントが数年ぶりに再開されるなど、明るい兆しも出てきた。


TDB景気動向調査では、今後1年間程度の国内景気は、海外経済の減速が懸念されるものの、観光関連などサービス消費を中心に、緩やかな改善傾向で推移すると見込む。しかし、11月に実施した「2023年の景気見通し」に関する調査では、「回復」局面を見込む企業は前年調査に比べ減少し11.5%であった一方、「悪化」局面とする企業が25.3%で倍増となるなど、景気の先行きに対する企業の警戒感は高まっている。

  • アンケート期間は2022年12月12日~16日、有効回答企業数は1,672社(インターネット調査)

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アンケート結果
  1. 「ロシア・ウクライナ情勢」などの地政学的リスク、コスト高関連が上位にランクイン

    2023年の注目キーワードについて尋ねたところ、「ロシア・ウクライナ情勢」をあげた企業が90.3%で最多となった。以下、「原油・原材料価格高騰」(68.5%)、「電気料金値上げ」(59.9%)、「円安」(58.4%)となり、企業物価の押し上げ要因となるキーワードが続いた。「新型コロナウイルス」(57.9%)と「台湾有事」(51.3%)も半数を超えた。


    「ロシアのウクライナ侵攻が今後どうなるかが、経済に対して依然大きなインパクトを与えると考えている」(陶磁器・ガラス器卸売)、「ロシアのウクライナ侵攻により、台湾有事がより現実味を増していることが気にかかる」(証券投資信託)など、地政学的リスクの顕在化が、引き続き日本経済に与える影響を不安視する声が聞かれた。


    物価等の高騰を懸念する企業からは「原油や原材料について価格高騰や入手困難が続くと、事業継続に影響が出る可能性がある」(界面活性剤製造)、「電気料金が以前と比べ3倍以上になり、電気料金の上昇を抑えてほしいと強く願う」(金属プレス製品製造)、「円安ドル高が止まり、円高に戻るのか注目している」(麺類製造)といった声があがった。


    2023年の注目キーワード トップ20(複数回答)

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  2. 業界別、建設は「働き方改革」、製造は「価格転嫁」、運輸・倉庫は「物流の2024年問題」

    業界別に、全体より10ポイント以上高かった注目キーワードをみると、『建設』は「働き方改革」(36.6%、全体比+10.1ポイント)が多くなった。背景には深刻な人手不足があり、企業からも「小・零細企業は後継者がいないなか、新卒を含めた新規採用も困難な状態にある」(土木工事)や「外国人人材の規制緩和が進まないと、中小企業の経営が破綻する」(木造建築工事)といった声が聞かれた。


    『不動産』は、心理的な高揚などが期待される、「国際的なスポーツイベント」(23.0%、同+10.4ポイント)をキーワードとして捉えている。


    『製造』は、「価格転嫁」(44.1%、同+10.0ポイント)が高くなった。「原材料価格の高騰が2023年にもう一段階あると見込むなか、価格転嫁が思ったように進まず、中小企業は特に厳しい状況が続いている。一般的な物価の上昇もあるので人件費を引き上げたいが、利益を確保できないとそれもできない」(荷役運搬設備製造)や「今までの物価が低すぎた。生産性を上げることなどに努めつつ、物価上昇を受け入れてもらわなければならない」(水産練製品製造)との声が聞かれた。


    『運輸・倉庫』は、「原油・原材料価格高騰」(81.8%、同+13.3ポイント)、「賃上げ」(51.9%、同+13.6ポイント)、「働き方改革」(50.6%、同+24.1ポイント)と、燃料価格高騰や深刻な人手不足などを背景とした待遇改善に関連するキーワードが並んだ。加えて、「物流の2024年問題」(66.2%、同+47.8ポイント)は、時間外労働の上限規制が適用されることで、長距離運送のドライバー確保が難しくなると言われており、業界に直結するキーワードとして、全体を大幅に上回った。

    2023年の注目キーワード 業界別 全体比10ポイント以上プラス (複数回答)

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    「2023年の注目キーワード」についての主な企業の声         
    • ロシアのウクライナ攻撃の影響が価格高騰を誘発し、新型コロナ対策による半導体の不足で商品が入ってこなかったため、来年はそれらが解決することを願う(管工事)
    • 新たな設備投資につながる、製造業の国内回帰の動きに期待(塗装工事)
    • 公的組織や各種団体などによる大規模会合・イベントの開催に注目している(酒類卸売)
    • 6月頃まではG7広島サミットで仕事が動きそうな気がする(はつり・解体工事)
    • AI機能の活用でキャッシュレス・デジタル化が急速に進むと想定(給排水・衛生設備工事)
    • メタバースに注目。仮想空間での買い物や事業提案が本格的に出てきそう(紙製品製造)
    • 円安にともなう原材料の高騰により製造原価が上昇し、販売価格に転嫁できずに利益を圧迫していく傾向を懸念している(冷暖房設備工事)
    • 資源価格、エネルギー価格、食料品の値上げは法人だけでなく、個人消費にも大きな影響を与えており、政府がどのような対策を講じるかに注目している(銀行)
    • 新型コロナと共存し経済を回していくための対策をどうするかが重要(家具・装備品製造)
    • インボイス制度を危惧している。体力のない会社では、下請先を変えるか、取引先にインボイスの登録をしてもらわないと、負担が大きすぎて倒産の危機に陥る(一般管工事)
    • 増税議論による景気減速を懸念している(自動車駆動・操縦・制動装置製造)


  3. まとめ

    本アンケートの結果、2023年の注目キーワードに「ロシア・ウクライナ情勢」をあげた企業は9割超となった。さらに「原油・原材料価格高騰」のほか、「電気料金値上げ」「円安」「新型コロナウイルス」「台湾有事」について、半数を超える企業が注目している。


    業界別では、『建設』は「働き方改革」、『製造』は「価格転嫁」を注目している企業が多く、『運輸・倉庫』は自らの業界に直結する「物流の2024年問題」が全体を大幅に上回った。


    2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギーや原材料価格の高騰を招く要因の1つとなっているが、いまだ収束への道筋は見通せず、多くの企業経営者が2023年に最も注目すべきキーワードとして捉えている。加えて2022年は、円安などを背景として原油や原材料、電気の価格が高値で推移し、一部を転嫁すべく値上げが相次いだ1年であったことから、同様のキーワードが多くあがった。また新型コロナとの共存や台湾有事への懸念のほか、首相が打ち出した防衛費を巡る増税方針に疑問を呈する声も聞かれた。


    他方、「SDGs」に加えて、「DX」「キャッシュレス決済・デジタル賃金」「脱炭素・GX」「リスキリング」「自動運転・EV」などのキーワードは、新たな変化を生み出す兆しを捉えている。


    2023年の注目キーワードは、目下直面する問題が多くあがるかたちとなったが、来る年はそれらを乗り越え、平和で明るい1年であるよう願いたい。



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