トピックス
2004年11月8日
【倒産リスク回避と公的支援によって
減少傾向をたどる企業倒産】


  企業倒産の減少傾向が顕著になっている。すでに9月までで21カ月連続の前年同月比減少となり、連続記録では71年6月から73年4月の23カ月に次いで戦後3番目となった。

  また、負債総額も今年1〜9月で5兆9,930億1,400万円と前年同期比36.6%の大幅減となり、倒産件数、負債総額ともに減少傾向はより鮮明になっている。

  大型倒産をみても、ゴルフ場、不動産、リゾート業者が負債上位を独占。実態を伴う倒産はごくひと握りであり、ゼネコン、流通など大手問題企業への支援だけでなく、本来であれば淘汰のターゲットとなるはずの中小企業でさえも延命が続いている。

  たしかに金融不安は遠のき、外需やデジタル家電ブームの追い風に乗って景気は回復基調をたどり企業業績も改善。こうした経営環境の変化が倒産の減少に少なからず影響を与えている側面は否定できない。

  しかし、バランスシート調整にメドをつけ、需要底打ちの恩恵を享受しているのは大手企業やごく一部の中堅・中小企業のみであり、多くの中小・零細企業は依然として財務体質の改善はままならず、売り上げ、収益の低迷にあえいでいるのが実態である。

  さらに、過去の倒産の減少局面と比較すると、いまだ極めて高水準を維持していることに変わりはなく、4分の3を不況型倒産が占め、業歴30年以上の老舗倒産も過去最悪の27%に達している。さらに事業継続を断念する破産も過去最悪を更新し続け、水面下では件数にカウントされない廃業、休業などの"隠れ倒産"も膨れ上がっている。それでも現在の企業を取り巻く環境、経営実態を見るにつけ、倒産を巡る動きは明らかに鈍いといわざるを得ない。

  こうした倒産抑制の要因としては、まずは倒産リスクを回避する動きが急速に進んでいることが挙げられる。具体的には、企業間信用の縮小による手形取引の減少、新規事業や設備投資の抑制であり、売り上げの急減を覚悟のうえで、それでもとにかく倒産だけは避けたいという思惑である。

  一方の金融機関も、収益向上と不良債権処理の加速という二律背反の課題を突きつけられていることで徐々に身動きがとれなくなっている。貸し手、借り手とも身動きがとれないのだから、倒産が先送りされるのもうなずける。

  そして最大の要因は、政府による相次ぐ中小企業救済策に集約される。政府系金融機関の救済的融資、「セーフティネット保証」や「資金繰り円滑化借換保証制度」などの相次ぐ公的支援の拡充によって、とりあえずの資金繰りをつけているのが実状なのだ。

  つまり、倒産リスク回避と公的支援策が倒産減少を招いているわけで、残念ながら自律的な減少ではないのである。これこそ、様々な手段を駆使して危機を封じ込め、すべてを先送りするとともに、「破綻」から「再生」への転換という現在の不良債権処理を象徴しているかのようである。そうした意味では、倒産は「減少」というよりも、やはり「抑制・先送り」されていると見るべきだろう。

  多くの中小企業は依然として、歯止めのかからない需要低迷による減収と供給過剰による価格下落に悩まされており、決して根本的な危機が解決されたわけではないのである。

  これでは本来の不良債権処理が加速するはずもなく、大手企業や中小零細企業の抜本処理まで封印され、市場メカニズムばかりでなく、「倒産メカニズム」をも麻痺させてしまうのも当然だろう。これこそ、極度の信用収縮による企業間取引の停滞を如実に物語るものであり、このままでは企業の新陳代謝を鈍化させ、経済活動そのもののエネルギーを喪失させるだけである。

  このように倒産は減少が続き、表面的には静けさが漂っているとはいえ、その実態は封じ込め、先送りされているだけなのだ。そしてそのツケはマグマの如く膨張しているのは間違いない。

  今後の見通しについては、中小企業救済策が継続されることから、当面、倒産は低水準の推移が続くと見られるが、素材価格の上昇、原油価格の高止まり、2005年4月のペイオフ全面解禁を控えての地域金融機関の淘汰を控えた信用収縮の増幅など、倒産が増勢に転じる懸念材料は山積しており、依然として不透明感は拭えない。


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