トピックス
2005年6月7日
【株主利益を毀損させかねない過剰な買収防衛策】


  ライブドアとフジテレビのメディア争奪戦を契機に、金融・証券市場、企業法制の規制緩和の予想を越える副作用に慌てた政府・自民党は、株式交換を使った海外企業による日本企業買収の解禁を1年先送りした。とはいえ、日本企業が外資のターゲットになるのはもはや避けられないのが現実で、ライブドアによるニッポン放送買収騒動は、多くの企業にとって対岸の火事ではない。

  ちなみに、買収の防衛スキームとしては、
@買収側の議決権比率を強制的に引き下げる「ポイズンピル」(毒薬条項)
A友好的な株主に株主総会での拒否権を与える「黄金株」
B企業の持つ事業権や優良子会社などの資産を第三者に売却して買収価値を下げる「クラウンジュエル」(=王冠の宝石)
C友好的な買収、もしくは防衛のために株式を取得してくれる「ホワイトナイト」(白馬の騎士) などがあるが、日本の大手企業は相次いで敵対的買収への防衛策に乗り出し、上場企業だけですでに80社以上が防衛策を決めている。イトーヨーカ堂は今年9月にセブン−イレブン・ジャパン、デニーズジャパンと共同持ち株会社を設立し、子会社のセブン−イレブンが親会社のヨーカ堂の時価総額を上回るという資本のねじれ現象の解消を図る。

  さらにこのねじれ現象では、「東京ディズニーランド」で知られるオリエンタルランドも、親会社の京成電鉄から株を取得し、親子逆転関係を是正する。新日本製鐵は住友金属工業、神戸製鋼所、新日本石油はコスモ石油とそれぞれ株式持ち合いを決め、松下電器産業や武田薬品工業、キヤノンなどは新株予約権などを使うポイズンピルの導入を検討するという。

  しかし、行き過ぎた防衛策は投資家のみならず、証券市場にも大きなデメリットをもたらし、最大の防衛策であるはずの企業価値向上をも妨げる。あくまで本質的な防衛策は、利益の株主還元率を上げて株価、時価総額、そして企業価値を上げることに尽きる。そのためにも安易な防衛策が肝心の株主利益を毀損させず、経営者サイドの保身につながらないようなルールづくり、歯止め策が求められるわけだ。

  それなくして上場企業が軒並みポイズンピルを導入してしまえば、友好的な買収であっても再編の障害になりかねず、結果として株式の流動性低下を招き、日本経済にとっては大きなマイナスになる。また、株式の持ち合い強化も、時代に逆行する行為そのものである。

  日本企業は、持ち合いによるリスクや親密企業との馴れ合いを絶つために株式の持ち合い解消を進めてきた。それが、敵対的な買収に対抗するために再び友好的な企業同士が株を持ち合って結託するというのだ。こうした手法は、資本効率の低下や一般株主の減少、経営者の保全につながるのはいうまでもない。

  上場企業であれば、常に買収される可能性があることを覚悟するべきではないか。なにせ株式の時価総額が純資産を下回る上場企業は、3分の1近くにも上る。

  企業買収の流れはもはや止めることはできない。米国流のM&Aの大波が押し寄せ、玉石混交の企業買収が日常化する時代の到来は近い。とくに、PBR(株価純資産倍率)1倍以下などの「割安株価」、「ブランド力」、「インフラ力」あたりをキーワードに、規制業種の業界再編が当面の焦点になろう。

  それを狙った企業再生ファンド、ハゲタカ・ファンド、ヘッジファンド、国内ファンドなど買収の仕掛け人の登場が相次ぎ、今回のライブドアのようなITベンチャーも主役の一角を成しているのは間違いない。

  ただ、日本と米国のITベンチャーを比べると、その実態にはかなりの違いがある。ポータルサイト事業を主体とした日本のベンチャーは、株の値上がりを糧とした企業買収もしくは、金融ビジネスへの傾倒が大半を占め、極めて投資業に近いリスキーなビジネスモデルといえる。

  一方の米国のITベンチャーといえば、技術・研究開発投資とIT技術を駆使して、新たなビジネスを創出、提供するケースが多い。少なくとも技術力という点では虚業と実業の差とでもいえようか。それだけに、今後はわが国のITベンチャーの顔ぶれは目まぐるしく変わっていく可能性が大きいが、日本型のITベンチャーが日本中にはびこる旧来の不合理な壁を突き破る役割を果たそうとしていることは間違いない。

  いずれにしても、経営者がぬるま湯につかっていられた時代はいよいよ終焉を迎え、株主はもちろんのこと、社員、取引先、顧客といった全てのステークホルダー(利害関係者)を意識した経営が問われることになる。


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