トピックス
2005年8月5日
【企業倒産増加への兆しは景気回復の証左なのか】


  ここ3年余り、減少傾向を辿ってきた企業倒産に増加への兆しが見えてきた。28カ月連続で前年同月比減少を続けてきた倒産だが、5月はわずかながらも増加に転じ、そして6月は749件と前月比29.3%、180件の大幅増加を記録。民事再生法も72件、同20.0%の増加、破産も701件で同32.3%の大幅な増加をみせている。

  その要因としては、@メガバンクを中心に不良債権処理のメドがつきつつあることから、中小企業向け債権の処理にシフトしている、A景気回復を背景とした企業間取引の活発化に伴う資金ショート、水面下にあった倒産の顕在化――などが想定される。

  特に注目すべきは、踊り場が長引いているとはいえ、回復基調を維持している景気との関連性である。

  因みに、年間2万841件の戦後最悪を記録した1984年の経済状況といえば、第2次オイルショック後の長期にわたる不況からようやく脱却しようしていた時期であり、それまで耐え続けてきた企業が経済活動の活発化によってあぶり出された結果、中小企業を中心に倒産が急増。「景気回復過程における倒産多発」といわれる論拠となった。さらに産業構造では、重厚長大から軽薄短小への転換期だった。

  一方、今回はバブル崩壊後のデフレ不況の長期化、不良債権問題と金融不安の深化、さらには経済・産業構造の大変革期にあり、戦後2番目を記録した2002年まではその煽りを受ける形で倒産が多発してきた。

  ところがその後は、不良債権処理の手法が、「破綻」から「再生」、「法的整理」から「私的整理」へとシフトするなか、政府による中小企業救済策や企業サイドのデフォルト回避の定着もあって、2002年頃から倒産は減少を辿ってきた。もちろん、実態と比べると明らかに倒産は抑制・先送りされてきたことは言うまでもない。

  そして、ここにきてそうした動きに変化の兆しが見え始めているのである。倒産件数の増加もさることながら、業種的に建設業、小売業、規模的には中小零細企業というこれまで抑制されてきたセクターにおいて、軒並み大きく件数が増えていることは見逃すことはできない。

  もちろん、倒産動向が転換期を迎えているか否かについては、もうしばらく状況を見なければ判断はできないが、ひとつの曲がり角に差しかかりつつあることは間違いないようだ。

  そしてもうひとつの問題が、仮に転換期に入り、一時的に倒産が急増、企業の淘汰が進んだとしても、これによって大手から中小零細企業までのオーバープレーヤー状態が解消され、市場メカニズムが回復するのかといえば、残念ながらその保証はないことである。

  というのも、わが国の産業構造、特に中小零細企業がおかれている立場が、従来とは大きく変わりつつあるからである。具体的には、かつては好調な大手企業が下請企業を潤し、それが下請けから孫請けへと川下へ波及した。ところが現在は、コストダウン最優先で低コストの海外へ発注してしまい、その利益が国内に還元されないというアンバランスな2極化が定着、従来の利益の分配メカニズムが崩れているのである。その背景には、日本企業の脆弱化、系列の崩壊があることはいうまでもない。

  また、倒産主因を分析してみると、84年は放漫経営や経営計画の失敗という、いわゆる「内部要因」が過半数を占めていた。しかし近年は、業界・販売不振、金融破綻などの「外部要因」、つまりは「不況型」が倒産企業の4分の3を占めており、経営者の手の届かない要因によって多くの企業が倒産に追い込まれているということである。それだけに今回の不況型倒産は、単なる景気サイクルよりも「構造的」な要素が大きく、そうした問題が解消されるまでしばらくは続く公算が大きいようだ。


このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.