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2006年3月7日
【ゼネコン業界にみる改正独占禁止法施行の波紋】


  2006年1月に施行された「改正独占禁止法」が、各業界へ様々な波紋を広げている。すでに昨年の旧道路公団による橋梁工事の談合事件に続いて、今年1月には防衛施設庁の空調施設を巡る官製談合など相次いで談合事件が摘発され、当局の厳しい姿勢が示されている。そのほかでも今回の法規制の強化は、運送、サービス、外食、金融などあらゆる業界へ影響を及ぼしつつある。

  同法改正の最大のポイントは、談合やカルテルに対する罰則が格段に強化されるとともに、公正取引委員会の権限が大幅に強化されたことに尽きる。ちなみに改正の柱は、@談合に対する課徴金の引き上げ、A談合などを自己申告した企業への課徴金減免、B公正取引委員会への犯則調査権の付与――などである。課徴金の引き上げは、違反対象の売上高の6%から10%へ、10年以内の再犯については50%もの割り増し課徴金が適用されることになり、企業側にとっては大きな負担となる。

  また、公取委の犯則調査権については、従来の調査権に加えて強制力を伴う「犯罪捜査」が可能となる。この公取委の裁量権限強化のインパクトはきわめて大きく、監視体制の厳格化や摘発案件の急増につながるとみられる。また、権限だけでなく人員体制も大幅に強化されることで、今後は国税、東京地検、警視庁などとの連携による摘発・事件化の増加は間違いない。

  ところで、今回の改正独禁法の影響を最も受けそうなのがゼネコン業界。というのも、増加が見込まれる摘発企業に対しては、罰金のみならず、官公庁からの指名停止・損害賠償請求・補助金停止などで、従来よりも重いペナルティが課せられるからである。

  さらに、信用失墜に伴う取引先の散逸も懸念される。特に「コンプライアンスの重要性が増しているだけに、経営問題にまで発展するケースもあり得ないことではない」(金融関係者)のだ。事実、昨年9月の上場ゼネコン・勝村建設のケースでは、談合事件によって同社幹部が逮捕、全国の自治体からの指名停止という従来よりも重い行政処分も重なったことで再建計画策定が頓挫、民事再生法の申請に追い込まれている。

  今回の改正によって談合がままならなくなれば、熾烈な受注合戦の火ブタが切られることになる。その結果、「スーパーゼネコンはまだしも、中堅・地場ゼネコン、下請け業者は致命的なダメージを被るのは必至」(大手ゼネコン幹部)との見方が大勢を占める。

  それでなくてもゼネコン業界は、ここ数年あまり倒産と淘汰を繰り返し、ようやく過剰債務から解き放たれたばかりという病み上がり状態にある。市場の縮小に歯止めがかからず、過当競争は一向に解消されないなど、業界環境は決して改善されてはいない。特にスーパーゼネコンのひとり勝ちが加速しているだけに、今後は中堅クラス以下の倒産などによって業界の淘汰が一気に進む公算が大きい。

  ただ、今回の改正法によって談合がすべて排除されるかといえば、やはり疑問符がつく。ある業界関係者は、「公共工事と官僚の天下りが存在する限り、談合システムは変わらない」と指摘する。確かに規模を問わず、全国の大半の公共事業では何らかの形で談合が行われてきたのが実態であり、さらに建設業界への天下りは依然として継続されることからも、すぐに談合が絶滅するとは考えにくい。

  とはいえ、今回の独禁法改正によって監視の目が厳しくなり、部分的かつ緩やかであっても談合そのもののシステムが崩れていくことは避けられないだろう。結局は、規模や体力の勝負となり、スーパーゼネコンに利益が集中する一方で、いずれは中堅中小、地場ゼネコンは弾き飛ばされることになりそうだ。


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