トピックス
2006年5月12日
【消費者金融業界を窮地に追い込む貸出金利引き下げへの動き】


  今年4月、金融庁が業界大手アイフルに対して強引な取り立てなどを理由に全店舗を対象とした3−25日間の業務停止という異例の厳しい処分を下したことで、消費者金融業界に大きな衝撃が走った。

  今回の"アイフル・ショック"の背景にあるのが、「グレーゾーン金利」と「過剰貸し付け」。全国で200万人ともいわれる多重債務者問題に端を発したこの問題だが、なかでもグレーゾーン金利にスポットが当たっている。消費者金融の貸出金利の上限は、「出資法」が定める年29.2%と、「利息制限法」が定める最大20%というダブルスタンダードがとられていることで、法的な位置付けが曖昧な「グレーゾーン金利」が存在してきた。

  これまで消費者金融業者は、出資法の29.2%を実質的な上限金利とし、「現行の平均貸出金利は約23%、一方の資金調達コストは大手で1〜2%、中小でも5〜6%」(業界関係者)というウマ味によって、わが世の春を謳歌してきたのである。

  ところが、利息制限法(最大20%)を超えるグレーゾーン金利の却下という今年1月の最高裁判決が大きな潮目の変化となり、今回のアイフルへの行政処分によって、金利一本化への動きがにわかに高まってきたわけだ。

  今回の上限金利引き下げに対しては、当然の如く業界は猛反発する。「ハイリスクな顧客にはそれなりの金利が不可欠」、「上限金利が下がると融資審査が厳しくなり、借りられなくなる顧客が増えて違法なヤミ金融の増加を招く」などとして、貸出金利の引き下げを否定、グレーゾーン金利撤廃ならば、より高金利の出資法への一本化を主張している。

  しかし、「そもそもヤミ金被害は多重債務がその引き金になるケースが多く、消費者金融の金利と直接は結びつかない」、「顧客は、あくまで受け身の立場」と借り手保護が優先されつつあり、業界は厳しい立場に立たされているのが実状だ。

  そして4月21日、金融庁の有識者懇談会である「貸金業制度等に関する懇談会」が、「グレーゾーン金利は撤廃、上限金利は利息制限法の20%まで引き下げることが望ましい」との中間報告を提言、6月をメドに最終報告をまとめるという。それを受けて自民党は、過剰貸し付けや説明義務の厳格化、広告規制、業者参入規制の強化なども盛り込んで改正案を作成、今秋の臨時国会で貸金業規制法を提出する方針だ。金融庁も法改正を視野に入れた議論を煮詰めていることから、もはや上限金利引き下げへの流れは止まりそうにない。そもそも、2004年に出資法と貸金業規制法を改正した際、3年後に見直しを図ることになっていた経緯があるだけになおさらだ。

  今後の展開だが、クレーゾーン金利の撤廃はほぼ確実であり、焦点は新たに設定される上限金利水準となる。現段階では、「20−23%あたりが落とし所」との見方が有力。ただ、与党内でも上限金利引き下げに対する慎重論もあり、金利設定には流動的な面も残っているようだ。

  いずれにしても、貸出金利の大幅な引き下げはもはや不可避であり、消費者金融業界は大きなダメージを受けることになる。96年3月末に全国で3万2,000あった貸金登録業者は、2000年に出資法の上限金利が40.004%から現行の29.2%に引き下げられたことで、2005年3月末では1万8,000にまで減少している。ここにきて、個人の自己破産の高止まり、過当競争の激化、新規参入などによって収益に陰りが見え始めていただけに、今回の貸出金利の引き下げと今後のゼロ金利解除による資金調達コストの上昇というダブルパンチが業界を襲う。

  ゴールドマン・サックス証券では、上限金利が20%へ引き下げられると、融資残高が大幅に減少、大手各社の営業利益はほぼ半減すると試算している。また、「上限金利が18%まで下がると大手4社の純利益が約2,700億円減少するという試算もあり、2006年3月期予想では全ての純利益が吹き飛ぶことになる」(業界関係者)といい、これまでの高収益モデルが崩れ、業界全体が大きな転換を迫られることは間違いない。

  こうして、大手ですら厳しい経営を強いられるだけに、大半を占める貸付残高10億円未満の中小業者は致命的な打撃を受ける。今後は廃業、身売り、倒産、なかにはヤミ金へと流れていく業者も想定される。また、中堅クラスでは生き残りのための合従連衡が加速していくかもしれない。大手では、アコムが三菱東京UFJ、プロミスが三井住友の傘下に入っているが、独立系のアイフル、武富士、三洋信販などは新たな提携戦略を迫られる可能性もある。

  今回の激震によって、かつてない淘汰の危機にさらさられる消費者金融業界。いまや消費者金融の利用者は2,000万人を超え、消費者向けの貸金残高は2005年3月末で19兆8,500億円に達するという巨大市場を形成しているだけに、今後の動向には目が離せない。


このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.