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2008年12月3日
金融危機による米国の混乱は5年

 米国発の世界金融危機が、金融不安と外需の減速、円高という形でわが国の実体経済の減速を招いているが、その米国経済の見通しはどうだろうか。ここ2ヵ月余りの自動車販売、住宅着工、百貨店売上高などを見ても、米景気は加速度的に悪化している。ゼネラル・モーターズ(GM)の経営危機が、その象徴といえる。今回の金融危機は「証券化バブルの崩壊」であると同時に、米国の「消費バブルの崩壊」でもある。米国のGDP1,400兆円のうち個人消費が7割を占めていただけに、「借金に借金を重ねてモノと株を買う」というシステムが崩れてしまったダメージは大きい。

 10年前の金融危機は、銀行が企業に融資をする「間接金融」による融資の焦げ付きであったことから、債権の劣化は極めて遅かった。ところが、今回の主役は証券、社債などのデリバティブ市場という「直接金融」であることから、債権の劣化が極めて早く、損失規模も膨大だ。さらに、その実態がブラックボックス化していたこともあって瞬く間にシステミックリスクへと波及してしまった。

 米国は、90年初めのバブル崩壊を経て、「IT」と「金融」を核にして発展してきた。そのITバブルが2000年に崩壊、代わって登場したのが住宅(不動産)、つまり今回のサブプライムローンだった。米国の繁栄には、常に「金融」が源泉にあったのである。2006年の米国全企業の利益のなんと4割が「金融」からのものであり、それが今回の金融危機によって根底から崩れたことで、米国の産業界の再構築にはかなりの時間とコストを要するとみられる。

 米景気の回復までの期間だが、最悪期は脱しているものの「金融の混乱は少なくとも2009年中は続き、米国景気の大底は2010年あたり」との見方が大勢を占める。住宅価格もあと1割くらいは下がる可能性があり、自動車産業や個人消費の回復も容易ではない。

 因みに、1929年の大恐慌は回復まで4年の年月を要している。今回は、損失の規模や一極集中の米国経済システムそのものが大転換を迫られていることから、それ以上かかる可能性は大きい。そもそも、今回のような「金融」を起因とした景気悪化は、通常の景気サイクルと比べると生産損失が2倍から3倍、悪化期間は2倍から4倍といわれる。

 もちろん、決して投資銀行がなくなるわけでもなく、証券化ビジネスが消滅するわけでもない。各国に「中央銀行」が整備されて国際協調もとられるため、1929年当時のようにGDPが3割減、失業率が25%に達するといった事態も回避される公算が大きい。

 とはいえ、世界を巻き込んだ金融危機であり、カネの流れも大きく変わり、なおかつ経済のパイや流動性が大きく縮小することは間違いない。証券化商品のウエートが米国の4倍といわれる欧州経済も致命的な打撃を受けていることから、世界的な混乱は5年は覚悟する必要がありそうだ。


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