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2009年5月8日
ゴーイングコンサーン注記基準の変更がもたらすもの

 前回書いた5月危機だが、幸いなことに杞憂に終わりそうだ。金融庁は4月9日に開催した企業会計審議会で、継続企業の前提(ゴーイングコンサーン、以下GC)に関わる監査手続きを改訂してGCの注記を2009年3月期決算から減らすようにしたからだ。

 GCの注記は2002年10月の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(財務諸表等規則)の改正の際に新設された。たとえば債務超過や継続的な営業損失の発生、重要な債務の返済の困難性など12項目(日本公認会計士協会の監査委員会報告では20項目)に該当する場合、財務諸表の後などに注記することになっていた。しかし、世界同時不況の進行でGCを注記する企業が増加、3月決算の企業で見ると、第3四半期で実に172社にのぼった。GCが注記された企業は一部マスコミなどで「倒産予備軍」として扱われ、レピュテーションリスク(風評被害)が高まることになった。そこで金融庁は国際会計基準との整合性を大義名分にして改訂した。

 変更の主なポイントは、@貸借対照日(決算期末)において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況がある場合でも、貸借対照日後に解消・対応策が提示されて不確実性が認められなくなった場合は注記する必要がない、Aその場合は有価証券報告書の「第2事業の状況」の中にある「事業等のリスク」に「継続企業の前提に関する重要事象等」として開示する、B監査意見を表明しない、あるいは不適正意見を表明する場合、これまであった「経営計画等の合理性を検討」という部分を「対応策について検討」という表現に代えて、1カ月後には上場廃止になる監査意見不表明という企業にとっては最後通牒になるものを減らすなどだ。具体的には債務超過である場合、第三者割当増資を実施する予定とすれば、GC注記はしなくてよいことになる。

 これにより、確かにGCの注記企業や監査意見不表明の企業は減るだろう。しかし今後は、「事業等のリスク」に注目が集まるだけで大筋は変わらない。それ以上に問題なのは、経営者が窮余の策として出した解消・対応策をきちんと検証する機関が失われることで、企業の信用判断を誤ることになりはしないか。


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