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2009年10月5日
モラトリアム法案に意味があるのか

 亀井金融相が提唱しているモラトリアム法案が話題になっている。同法案は中小・零細企業や個人の住宅ローンの返済を3年程度猶予するというものだ。鳩山首相は「連立与党でモラトリアムまで合意しているわけではない」と発言する一方、元本のみの返済猶予を検討する考えを示した。さらに藤井財務相は「(返済猶予は)昭和初期の金融恐慌時にあったが、個人的な感想として今はそこまでの状況かという思いはある」と述べた。実際に我が国は昭和恐慌と関東大震災の2度実施している。

 亀井金融相のモラトリアム法案には問題が多い。まずは現状認識。日本政策金融公庫の中小企業景況調査によると、2009年9月の中小企業の資金繰りD.I.(余裕から窮屈を引いた数値)はマイナス12.3。直近で最も低い1月のマイナス20.8から回復しているばかりか、85年以降の同調査のなかでも極端に低い数値ではない。たとえば貸し渋りが問題になった98年7月にはマイナス31.7、大型倒産が相次いだ2002年もマイナス20を超えていた。もはや非常時ではなくなっていると考えるのがふつうだろう。

 返済猶予となると銀行にとっては企業の格付けを下げる必要があり、貸倒引当金を積み増さなければならない。そうなれば自己資本比率を維持するためにほかの企業に対しての新規融資を抑える行動にでる可能性もある。政府は返済猶予を受けた企業の格付けを下げないようにしたい意向だが、そうすると銀行の財務の信頼性に疑いが生じることになる。

 さらに政府は2008年10月末から中小企業の資金繰り対策として緊急保証制度をスタートさせているが、保証枠30兆円のうちまだ半分しか消化されていない。保証限度枠の拡大や、元本返済猶予期間の延長(スタート当初は1年、4月から2年)で十分に対応できるはずだ。

 そもそも返済猶予が法律になじむとは到底思えない。法制化することではモラル・ハザードを招くだけだ。金融庁は「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」を設置し、貸し渋りの疑いがある銀行を指導しており、「リスケジュール(返済条件緩和)を企業が申し出たら真摯に話を聞くように言われている」(地銀幹部)という。政権交代で色の違いを出したいのはわかるが、まずは緊急保証制度の検証から入ったほうがいい。


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