トピックス
2009年11月5日
サンクコスト

 先日出張で福岡県大牟田市を訪れた。地元新聞記者と雑談していて話題になったのが、イオンのショッピングセンターが完成したにも関わらず開業を延期したことだった。理由はテナントが集まらないためだとかで、イオンによると来年度以降の開業を目指しているという。

 「サンクコスト(埋没費用)」という経済学用語がある。事業に投下した資金のうち、撤退・縮小したとしても回収できない費用を指す。たとえばある映画のチケットを買ったが、その映画はおもしろくないという評判がある。それでも映画を観た場合、上映時間が無駄になる。そのチケット代がサンクコストというわけだ。英仏が莫大な資金を投じて開発した超音速旅客機コンコルドが、その燃費の悪さなどから大半の航空会社が採用を見送ったにも関わらず運行をやめなかったことから、それまでの投資を惜しみ、投資をやめられない状態をコンコルド効果と呼ぶ。

 民主党がマニフェストに掲げた公共工事の見直しの一環として話題に上がる八ッ場(やんば)ダム建設事業でも、サンクコストが話題になった。もっとも、同事業の場合はさらに複雑で、事業費は国だけでなく受益地である東京都など6都県がすでに457億円を支出しており、中止になると負担金の返還を求められる可能性がある。民主党の前原国土交通相が当初のダム中止発言からやや後退させているように思えるのは負担金問題があるのではないか。

 企業経営者にとって決断力が重要なのは言うまでもない。前向きな決断は早いが、どうしても遅れるのが事業撤退や店舗閉鎖、人員削減といった後ろ向きな決断だ。そこにサンクコストという概念があるかどうかが非常に重要なことと言える。東芝がブルーレイディスク連合に負けて早々とHD DVD事業撤退を決めたことは、まさにサンクコストの発想があった。前向きな決断には夢が必要だが、後ろ向きな決断には何よりも理性が重要になることを、経営者なら覚悟しなければなるまい。


このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.