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2010年1月8日
外食産業の悲鳴と対策

 外食産業の悲鳴が聞こえてきそうだ。昨年1〜11月の倒産件数は600件と最近では過去最多だった2008年通年の634件を上回ることがほぼ確実だ。今年に入っても居酒屋「弁天」などを運営するSKSシステム(旧・大倉実業、大阪市)やオムライス店「ハローエッグ」などを運営するいづみや総本社(名古屋市)がいずれも自己破産申請の準備に入った。清算型の破産を選択するところに将来を悲観する経営者の姿勢が現れている。最大の要因は消費者の「巣ごもり志向」と低価格競争だ。牛丼業界では「すき家」を展開するゼンショーと「松屋」を展開する松屋フーズが、並盛りを280円に値下げした。これに対抗して割高な米国産牛肉にこだわる最大手の吉野家は期間限定で280円にした。確かに低価格戦略で成功している外食産業もある。イタリアンレストランを展開するサイゼリアは、昨年10月以降3カ月連続で月次売上高が前年同月を上回ったが、むしろ稀有な例だ。

 安値には安値で対抗することが正しい戦略かと言うと、決してそうではない。相互意思決定理論であるゲーム理論によると、こうした安値競争はやらないほうがましという結論に達する。先に安値で利益を上げても相手が追随するとシェア(市場占有率)は元に落ち着いて、安値にした分だけ利益がお互い減るからだ。

 それならどうするか。ポイントは発想を変えることにある。食肉商社によると、昨年のクリスマスには百貨店で1500円もする丸焼きチキンが飛ぶように売れたそうだ。家計は節約志向が続いているが、買った消費者はおそらく昨年までは外食していた人だったのではないか。つまり、1500円チキンは新たな消費者を見つけたことになる。ラーメン店「日高屋」のハイディ日高が比較的好調なのも夜の居酒屋として稼いでいるからだ。

 発想を変える必要性はどの産業にもある。100年に1度の不況の時代にただ漫然と戦略を決めていては負け組になるのは必至だ。発想の転換という点では、内田和成早稲田大学ビジネススクール教授が「異業種競争戦略」(日本経済新聞出版社刊)で述べている「事業連鎖」という発想がおもしろい。事業連鎖とは、業界や事業という枠組みを越えた、原材料・部品から最終消費者に至るまでの大きな価値連鎖を指す。たとえばパソコンメーカーのアップルが携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」を中心に音楽配信サービスを始めたことで業界環境が一変、CDレンタル店などが苦境に陥っている。音楽を提供する事業として見つめ直すとミュージシャンと聞き手である消費者が必要なだけで、ほかの事業は置き換わることができる。価格競争で体力をすり減らすより、外食産業という枠にとらわれずに事業を練り直してみる大きな発想がほしい。


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