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2010年3月3日
返済猶予殺到で倒産増加は先送りか

 大手6銀行がまとめた、「中小企業円滑化法」に基づく中小企業向け融資や住宅ローンの返済条件の緩和実績(昨年12月末時点)によると、申込件数は1万9352件(金額は8692億円)に達した。このうち中小企業は1万5429件(同8009億円)だ。同法は12月4日施行だから1カ月足らずでの件数になる。これに対して同時点で緩和を謝絶したのはたったの40件だというから、ほとんどが認められたことになる。

 同法がなければ倒産は春先から増加すると見られていた。08年10月にスタートした緊急保証制度を利用し、元本返済猶予期間を設けていた中小企業の元本返済が始まることと、公共工事の前倒し発注の効果が切れて建設業の資金繰りが悪化しているからだ。まさに平成の徳政令になった。

 しかし、返済緩和の大半が返済期間の延長と見られ、財務体質の抜本的な解決策にはなるまい。利益が上がらないかぎり倒産は先送りされるだけだ。そもそも倒産件数は中期的には増加する構造的な問題を抱えている。

 たとえば、建設業者を例にとって検証しよう。市場規模を測る名目建設投資は、ピークである1992年度の83兆9700億円から2008年度には47兆2300億円と44%も減少した。さらに2010年度は民主党政権による公共投資の抑制もあり、建設経済研究所は09年度比10.4%減の37兆6900億円にまで減ると見ている。一方、建設業者数はピークの99年度末の60万980社に比べると、08年度末は50万9174社と15.3%減にとどまる。1社当たりの建設投資額は35%も減っており、10年度はさらに減少することになる。つまり、明らかにオーバープレイヤー状態なのだ。

 回復基調にある製造業も同様だ。中国やアジアなどの新興国の景気回復で、自動車など大手メーカーの業績は持ち直しているが、「単価引き下げ要請は相変わらず強い」(建機部品メーカー)ため、下請けまで利益が回っていないのが現状だ。トヨタ自動車のリコールの影響を懸念する声も増えている。

 同法は来年3月末までの時限措置。うまくいけば1年間は倒産増加を先送りすることができるかもしれない。しかし、それまでに景気が大きく上向かなければ、先送りされた倒産の急増で金融機関の体力が消耗し、新たな金融危機が発生する公算がないとはいえない。やはり、厄介な法律だ。


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