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2010年6月3日
口蹄疫で揺れる食肉業界

 宮崎県の畜産農家に多大な被害を及ぼした「口蹄疫」問題は、宮崎牛の種牛49頭をも殺処分に発展するなど、最悪の事態がまだ続いている。現在のところ被害額は800億円とも言われているが、飼料販売業者、運送会社、食肉加工品メーカーのほか、獣医なども事実上営業をストップしているケースもあり、今後被害の範囲は更に拡大する可能性が高い。このほか人の集まる催しの自粛も始まっており、「五島トライアスロン」や「サイクルフェスタ壱岐」などスポーツイベントの中止により、旅館、民宿などのキャンセルが相次ぐなど、2次的、3次的影響がすでに報告されている。

 今回の事態で、全国各地にある「ブランド牛」は、宮崎産の子牛が流通しそれが成育されたものといった、業界の常識が明らかになった。それだけに宮崎産子牛が供給されていた産地も、競りの中止で一時生産量が減少するなど、感染のリスク以上に生産面での問題が他地域にも広がり始めた。しかしある農協関係者は過剰な報道から「風評被害」の方が心配だと、早期の終息を期待する。 

 また供給不足から子牛の取引相場が上昇しているが、小売での価格転嫁は難しいとみられている。総務省の「家計調査」によると生鮮肉に対する平均支出は減少傾向にある。不景気の煽りを受けて食費を削る家庭が増えたことと、デフレで小売価格の低下が続いているためだ。一方日本ハム・ソーセージ工業組合によるとウインナーソーセージの生産量は2009年では前年比5.1%増、ロースハムも同7.2%増と上昇トレンドが続いている。「巣ごもり化」と「低価格志向」がマッチしたためと見られるが、生鮮肉とは対照的な動きとなっている。

 農水省がまとめた2008年度の子牛の生産費調査によれば、生産費は前年度比8.4%増加した。労働費が横ばいであったが、飼料価格の上昇が影響した。これに対して市場価格の低下から収益は20.9%減少しており、畜産農家の現状は厳しい環境下に置かれている。食の安全が問われるなか、国内畜産業の果たす役割は大きく、政府、関連する自治体、消費者ともに冷静で適切な対応が急がれるところだ。


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