消費税率引き上げに対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2013年8月特別企画 -

 

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2013年9月12日
株式会社帝国データバンク産業調査部

消費税率引き上げ、企業の55.3%が業績に「悪影響」

〜 対策は「基幹システムの改修」「経過措置の把握」「取引先との取り決め締結」が上位に 〜


はじめに

 2012年8月10日に民主・自民・公明の3党合意にもとづいて、消費税率引き上げ法案を含む社会保障と税の一体改革関連法案が可決し、消費税は2014年4月に8%、2015年10月に10%へと引き上げられる予定となっている。しかし、政府は消費税率引き上げの影響を検証する有識者会議での議論やGDP成長率などの経済統計を踏まえ、10月頃に判断するとしている。そのようななか、消費税率引き上げによる個人消費や設備投資動向に加えて、企業業績への影響が懸念されている。
 このような背景を踏まえ、帝国データバンクは、消費税率引き上げに対する企業の見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2013年8月調査とともに行った。

調査期間:2013年8月20日〜8月31日
調査対象は全国2万2,760社で、有効回答企業数は1万1,114社(回答率48.8%)
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/visitors/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 消費税率引き上げで自社業績への「悪影響」を懸念する企業は55.3%。特に『小売』で8割を超える。ただし、前回調査(2012年7月)と比較すると、悪影響を懸念する割合は減少している。
  2. 税率引き上げへの対応策、「特に対策を行う予定はない」が52.5%で半数を超えた。他方、2014年3月までに対策を行う企業は22.9%。ただし、大企業ほど対策を早めに実施する傾向がある。
  3. 具体的な対策では、「基幹システムの改修」が最多、次いで「経過措置の把握」が続き、いずれも4割超。経理・システム面や取引先との取り決め、商品・サービス関連の対策が上位
  4. 取引先からの消費税率引き上げを理由とした値下げ要請を「承諾しない」企業は3社に1社にとどまる。「条件や企業との関係性による」が46.0%で最も高く、「承諾する」企業は5.9%。
  5. 『建設』の4社に1社がすでに駆け込み需要を実感。今後出てくると考える企業を含めると『建設』『不動産』『卸売』『小売』の4業界で半数を超える

1. 消費税率の引き上げ、企業の55.3%が業績に悪影響と認識

 消費税率が引き上げられた場合、自社の業績にどのような影響を与えると思うか尋ねたところ、「悪影響」と回答した企業が1万1,114社中5,296社、構成比47.7%で最多となった。「かなり悪影響」(7.7%)とあわせると、消費税率の引き上げによって業績に悪影響があると考える企業は55.3%で半数超にのぼった。他方、「影響はない」は25.3%と4社に1社にとどまった。
 一方、業績に好影響があると考える企業は、「好影響」(1.9%)と「かなり好影響」(0.4%)を合わせても、わずか2.4%と少数にとどまった。
 「悪影響」計を業界別にみると、『小売』が最も高く80.5%であったほか、『農・林・水産』(73.3%)も7割を超える高水準となった。消費者に最も近い業界である『小売』と、食料品の生産を担う『農・林・水産』で業績への影響を懸念する企業の割合が突出していることがうかがえる。
 前回調査(2012年7月調査)と比較すると、「好影響」計がほぼ同水準(前回2.0%)だったのに対し、「昨年末の政権交代から景気対策がおおむね効果を上げている」(建設、広島県)など、景気の上昇傾向を通じて業績への懸念がやや弱まったこともあり、「悪影響」計は11.8ポイント減少した(前回67.1%)。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業業1万1,114社


2. 消費税対策、半数超の企業が「特に対策を行う予定はない」と回答

 消費税率引き上げへの対策について実施状況を尋ねたところ、「特に対策を行う予定はない」が52.5%と半数を超えて最多となった。さらに、「2014年3月までに行う予定(8%への引き上げ前)」が22.9%で続いた。すでに「対応済み」と回答した企業は3.5%にとどまった。
 規模別にみると、「大企業」ほど早めに実施する傾向にあり、大企業の33.5%が2014年3月までには何らかの対策を行うとしている<「対応済み」(4.4%)と「2014年3月までに行う予定」(29.2%)の合計>。他方、「中小企業」では24.2%にとどまり、うち「小規模企業」は20.0%となり、企業規模が小さくなるほど対応予定企業は減少している。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業業1万1,114社


3. 具体的対応策、「基幹システムの改修」「経過措置の把握」が4割超、
「取引先との取り決め締結」も3割を超える

 消費税率の引き上げに対して、「対応済み」「2014年3月までに行う予定」「2014年4月から2015年9月までに行う予定」「2015年10月以降に行う予定」のいずれかを回答した企業3,261社に対して、その具体的内容を尋ねたところ、「財務会計や販売管理など基幹システムの改修」が47.3%で最多となった(複数回答、以下同)。さらに、「経過措置の把握」(41.0%)、「取引先と消費税の取扱いに関する取り決めを締結(端数処理、表示方法等)」(31.4%)、「税理士やコンサルタントなど専門家に相談」(28.3%)、「駆け込み需要と反動減の緩和策」(24.9%)などが続いた。経理・システム面や取引先との取り決め、商品・サービス関連の対策が上位に上がった
 企業からは、「消費税引き上げ前の買い急ぎ、引き上げ後の反動があるため、在庫数量の調整をする」(工作機械用工具卸売、埼玉県)や「既存の販路における既存の商品では明らかに売り上げはダウンする。既存先への新提案、新規先の開拓をさらに進める」(婦人・子供服卸売、愛知県)、「店舗での価格表示方法、レシートでの表示方法の検討」(各種商品小売、奈良県)など、在庫調整や新規開拓、表示方法の検討を進めるという声が挙がった。また、「価格転嫁できない場合は、訴え出る覚悟」(ねん糸製造、滋賀県)や「設備投資の停止、人件費削減、会社規模の縮小等何でもやらなくてはいけない」(金物卸売、大阪府)といった、企業の存続をかけて消費税率引き上げに対処せざるを得ないとする意見もみられた。


注:母数は消費税率引き上げに対して「対応済み」「2014年3月までに行う予定」
「2014年4月から2015年9月までに行う予定」「2015年10月以降に行う予定」の
いずれかを回答した企業3,261社


4. 消費税率引き上げを理由とした値下げ要請、「承諾しない」は3社に1社にとどまる

 取引先から、消費税率の引き上げを理由とした(または理由と思われる)納入価格の引き下げ要請があった場合、どのように対応するか尋ねたところ、「条件や企業との関係性による」と回答した企業が1万1,114社中5,110社、構成比46.0%で最多となった。また、「承諾しない」は33.1%となり、納入価格の引き下げ要請に応じないと考えている企業は3社に1社にとどまった
 他方、「承諾する」は5.9%で1割未満ながらも、一定数の企業が要請に応じると考えていることが明らかとなった。「承諾する」を規模別にみると、「大企業」(5.4%)、「中小企業」(6.1%)、「小規模企業」(7.4%)となり、規模が小さくなるにつれて要請に応じる傾向がある一方、「承諾しない」についても、同様の結果となった。
 業界別にみると、「承諾する」企業は『不動産』(14.3%)、『小売』(9.1%)、『農・林・水産』(8.0%)などが全体平均を上回った。取引先との関係や経過措置期間外で値下げを要請された場合に断りきれない様子がうかがえる。他方、「承諾しない」は、『運輸・倉庫』(41.5%)、『卸売』(38.0%)、『製造』(34.5%)が続いた。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万1,114社。


5. 『建設』の4社に1社がすでに駆け込み需要を実感、 消費税率引き上げまで
には『不動産』『卸売』『小売』を含む4業界で半数超が駆け込み需要を見込む

 自社の事業において、現在、駆け込み需要と思われる需要の変化がみられるか尋ねたところ、「すでに駆け込み需要がある」と回答した企業は8.5%となった。駆け込み需要に関する前回調査(2013年5月)と比較すると、4.4ポイント増加したが1割弱にとどまる。
 業界別にみると、『建設』(25.1%)と『不動産』(20.6%)がともに2割超と突出して高かった。前回調査との比較では、『建設』が12.7%から12.4ポイント、『不動産』が12.7%から7.9ポイント、『金融』が3.2%から5.3ポイント、それぞれ増加した。
 消費税率の経過措置と同時に、個人向けマンションなどの住宅ローン減税拡充や金利上昇懸念などから、「消費税率引き上げによる駆け込み需要として住宅の新築申込みがたくさんあった」(農・林・水産、石川県)や「駆け込み需要が実際の仕事に反映されだしてきて、職方不足が顕在化している」(木造建築工事、愛知県)など、ここ3カ月間でも前回調査(2013年5月)と同様に『建設』『不動産』を中心に駆け込み需要が生じていた。
 駆け込み需要を実感もしくは今後出てくると考える企業は、『建設』(61.0%)、『不動産』(50.3%)、『卸売』(50.4%)、『小売』(57.3%)で5割を超える


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業業1万1,114社。


まとめ

 1997年に3%から5%に変更されて以来17年ぶりに消費税率を引き上げるかどうか、安倍首相
が判断する時期が迫っている。しかし、消費税率引き上げが企業業績にどの程度の影響をおよぼすか、依然として不透明な要素が多い。また、消費税への対応にすでに動き始めている企業もあるが、他社の対応状況を気にしつつも手探りの状況にある。一方で、4〜6月期のGDP成長率が年率3.8%のプラス成長となったほか、2020年の東京五輪の開催決定など、経済環境は徐々に回復に向かっており、増税への地固めは進んでいるといえる。
 そのようななか、企業の半数超は消費税率の引き上げが自社の業績に「悪影響」を及ぼすと考えている一方で、特に対策をとらない企業も5割を超えている。現時点で具体的な対応策を実施している企業は少ないものの、その対策として基幹システムの改修や税率引き上げに向けた経過措置の把握など、必要に迫られることや情報収集に取り組んでいる様子がうかがえる。
 他方、駆け込み需要は3カ月前よりも多くの企業が感じているただし、依然として駆け込み需要は『建設』や『不動産』などの特定業界に集中している状況に変わりない。すでに「仕入先及び外注配送先からの値上げの通告は来ている。そのため、若干ではあるが消費税率引き上げに先駆けて、売価の値上げを行った」(めん類製造、北海道)など、消費税率の引き上げを織り込む動きも一部でみられる。また、「一時的な消費の落ち込み等も懸念されるが、その対策としての法人税減税や規制緩和等積極的な導入を期待したい」(産業廃棄物収集運搬、埼玉県)や「一定額以下のサラリーマンの所得税を緩和することが必要」(飲食料品卸売、兵庫県)といった声もあるように、政府は経済の変動に対する緩和措置を着実に進める必要があろう。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万2,760社、有効回答企業1万1,114社、回答率48.8%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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