2010年3月の景気動向調査
景気DIは28.8で3カ月連続改善、国内景気は着実に回復
< 2010年3月の動向 : 緩やかな回復局面 >
2010年3月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比2.1ポイント増の28.8と3カ月連続で改善し、その改善幅も拡大基調が続いた。
業界別にみると、『製造』(31.0)が中国やインドなど新興国の需要増にけん引されたほか、国内でも政策的な消費喚起によって改善を続け、2009年春先の景気底入れ後の最高を大幅に更新。『小売』(29.3)も水準としては『製造』に及ばなかったものの、家電や自動車をはじめ、家具や衣料品関連なども大きく改善したことから、『製造』とともにリーマン・ショック時(2008年9月)を上回る水準まで改善した。
全体の景気DIはリーマン・ショック時(29.3)の水準には戻していないが、外需だけでなく、政策的な消費喚起や緩やかな自律回復の動きにより内需も幅広く底上げされたことで、過去最低をつけた2009年2月(18.6)から10.2ポイント改善した。
国内景気はいまだ脆弱であるものの、踊り場局面を脱して着実に回復を続けている。
① 好調な外需や消費喚起により、『製造』は30台を回復してリーマン・ショック時を上回る
・アジアを中心とする好調な外需によって、電気や自動車、鉄鋼、化学関連などで生産活動の回復が続いた。また、政策的な消費喚起も功を奏し、『製造』は2009年春先の景気底入れ後の最高を大幅に更新し30台を回復。リーマン・ショック時を上回った。
② 政策に加えて自律回復の動きも表れ、『小売』もリーマン・ショック時を上回る水準に
・年度末における企業の一段の低価格戦略やエコポイント制度、エコカー減税・補助金などの政策が需要を押し上げ、「自動車・同部品小売」(35.0、同7.1ポイント増)や「家電・情報機器小売」(32.4、同4.2ポイント増)などが大きく改善した。
・他業種でも、「家具類小売」(29.2、同8.0ポイント増)や「繊維・繊維製品・服飾品小売」(26.8、同5.0ポイント増)、「飲食店」(28.7、同5.5ポイント増)が改善するなど、いまだ低水準ながらも、内需全体に改善傾向が広がっている。
→政策に加えて、緩やかな自律回復の動きも表れ始めたことで、『小売』もリーマン・ショック時を上回る水準まで底上げされ、国内景気の緩やかな回復をけん引した。
< 今後の見通し : 緩やかな回復局面 >
中国やインドなど好調な外需によって、国内の生産活動は回復が見込まれる。また、家計の金融資産が3年ぶりに増加(2009年末)するなかで、政策的な消費喚起や低価格品の広がりが消費者の購買力を復調させる契機となっている。今後、選択消費や巣ごもりの傾向がやや緩和され、内需の底上げにつながることで、緩やかな自律回復の動きが続くとみられる。2010年度は前年度から続く家計支援に加えて、子ども手当や高校授業料の実質無償化、住宅版エコポイント制度なども一定の効果が期待される。
ただ、企業のコスト削減圧力は依然大きく、国内の人的投資や設備投資は弱含む可能性が高い。雇用や所得に早期改善は見込めず、政策で前倒しされた需要も夏場以降は息切れの懸念がある。また、新興国の成長拡大で原材料価格は上昇傾向にあるが、家計の生活防衛意識が根強く残ることで、転嫁は進まず、企業の収益性低下も懸念される。
景気予測DIは「1カ月後」(29.6、当月比0.8ポイント増)、「3カ月後」(30.5、同1.7ポイント増)、「6カ月後」(32.1、同3.3ポイント増)となった。
国内景気は力強さには欠けるものの、内外需の底上げにより、緩やかな回復局面が続くとみられる。