2010年5月の景気動向調査
景気DIは31.7、国内景気の回復続くが、やや減速感漂い始める
< 2010年5月の動向 : 回復局面 >
2010年5月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.0ポイント増の31.7となり、5カ月連続で改善した。
業界別にみると、前月に6年ぶりの首位となった『製造』(34.5)が中国などの外需や国内の緩やかな自律回復の動きによって改善を続け、2カ月連続の首位となり、全体をけん引した。そのほか、『製造』には及ばないものの、『小売』(31.6)や『サービス』(32.3)、『不動産』(31.6)なども改善基調を持続した。
しかし、内需関連業界は回復の遅れが鮮明となっている。また、『小売』では家電や自動車関連業種が悪化し、これまでの政策支援の効果には息切れの兆しもみられる。ギリシャの財政危機に端を発する世界的な株価下落や円高の進行なども影響したことで、『製造』だけでなく、全体の改善幅縮小につながった。
国内景気は回復を続けているが、やや減速感が漂い始めている。
① 外需や緩やかな自律回復の動きにより、幅広い業種で改善続く
・アジアを中心とする需要増に国内の緩やかな自律回復の動きも加わって、『製造』では電機や自動車、化学、繊維関連などが改善し、『小売』でも食品やスーパー、衣料品関連、『サービス』も飲食店や教育関連など幅広い業種で改善傾向が続いた。
② 雇用環境や所得低迷で内需の回復遅れが鮮明、政策支援の効果には息切れの兆しも
・しかし、厳しい雇用環境や所得低迷の長期化により、『小売』は『製造』に比べて改善が遅れており、『サービス』はリーマン・ショック前の水準回復に至っていない。
・「家電・情報機器小売」や「自動車・同部品小売」が悪化し、家電エコポイントやエコカー減税・補助金などこれまでの政策支援の効果には息切れの兆しもみられる。
③ ギリシャの財政危機による世界的な株安・円高などで、前月までに比べ改善幅も縮小
・世界的な株価下落(日経平均一時9,500円割れで年初来安値を更新)や円高の進行(一時1ドル=88円台、1ユーロ=108円台)、ユーロ圏の停滞だけでなく、世界経済の不透明感が増したことも全体の改善幅の縮小につながった。
< 今後の見通し : 回復続くが、減速の可能性も >
大手メーカーや小売などの一部では業績回復が顕著であり、2010年度も内外需の取り込みやコスト圧縮によって収益力を向上させて、グローバル競争が激化するなかで設備投資の底上げにもつながるとみられる。また、緩やかな自律回復の動きに加えて、住宅版エコポイントや高校授業料の実質無償化、6月に支給開始となる子ども手当に対する企業の新商品やサービスの投入も、一定の効果を及ぼすことが期待される。
しかし、中小企業をはじめ多くの企業では回復が鈍く、雇用や所得の全体的な改善も困難なことから、内需の本格回復は見込めない。これまで需要が前倒しされてきた家電小売や自動車小売の動向も、注視する必要がある。参院選を控えて政策見通しは不透明であり、海外でもユーロ圏および同圏が最大の輸出先である中国の景気動向も楽観できない。また、デフレの継続や、株安、円高、資源高なども懸念材料となる。
景気予測DIは「1カ月後」(33.3、当月比1.6ポイント増)、「3カ月後」(35.2、同3.5ポイント増)、「6カ月後」(36.3、同4.6ポイント増)となった。
国内景気は回復が見込まれるものの、回復ペースは減速する可能性もある。