2010年6月の景気動向調査
景気DIは32.3、国内景気は回復基調を維持するも、減速が鮮明
< 2010年6月の動向 : 回復局面 >
2010年6月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.6ポイント増の32.3となり、6カ月連続で改善した。
業界別にみると、『製造』(35.3)が中国などの好調な新興国需要や脆弱ながらも国内需要の回復によって改善を続け、3カ月連続の首位となった。『小売』(31.8)や『サービス』(32.9)、『不動産』(32.6)など、内需関連業界も改善基調を持続した。
しかし、米国やユーロ圏では景気の回復傾向に減速の兆しが表れ始めており、原材料高や円高(ドル安、ユーロ安)も影響して、『製造』の改善幅は2010年に入り最小となった。『小売』『サービス』も改善業種数が減少し、改善幅も縮小。前月までの緩やかな自律回復の動きはやや後退しており、これら内外需の動きにより全体の改善幅は前月以上に縮小した。
国内景気は回復基調を維持しているものの、減速が鮮明となっている。
① 新興国需要や国内需要の回復により、『製造』『小売』『サービス』などで改善基調を持続
・中国やインドなどアジアを中心とする新興国の需要増や緩やかな内需の回復によって、『製造』では自動車や電機、機械などが改善し、『小売』では家電や自動車関連業種が改善、『サービス』では教育関連業種などで改善基調が続いた。
② 米国やユーロ圏の回復弱く、円高も影響して、『製造』の改善幅は2010年に入り最小に
・しかし、米雇用環境は低迷し、減税終了で住宅販売や着工も減少。米小売売上高は8カ月ぶりに減少した(5月)。財政不安が払拭されないユーロ圏も回復の足取りは重く、原材料高や円高も影響して『製造』の改善幅は2010年に入り最小にとどまった。
③ 雇用悪化や政策の不透明感などで、前月までの緩やかな自律回復の動きはやや後退
・国内は雇用悪化や所得低迷が長期化している。家電や自動車販売では政策効果が続いたものの力強さはなく、食品や衣料品小売、外食関連業種などが悪化して、『小売』や『サービス』の改善幅も2010年で最小となった。新内閣による子ども手当の満額支給取りやめや消費税率の引き上げ方針なども、家計の生活防衛意識の引き締めに影響したとみられ、前月までの緩やかな自律回復の動きはやや後退した。
< 今後の見通し : 回復続くが、減速の可能性 >
中国やインドなどのアジア圏をはじめ南米、アフリカなど新興国の需要増は続いており、これら好調な外需がけん引役となって、大手メーカーを中心に業績回復が見込まれる。内需では、住宅版エコポイントや子ども手当などの家計支援策が、消費増に一定の効果を及ぼすことも期待される。
しかし、大手メーカーにとどまらず、小売やサービス業などでも収益力向上を目的に海外シフトの動きが活発化しており、業績回復が国内の設備投資や人的投資の本格回復につながるかは不透明である。参院選後は財政再建路線の強化により、短期的に消費マインドを低下させる恐れもあり、これまで政策効果により前倒しされてきた家電や自動車関連需要の反動減も懸念される。海外でも欧米の景気動向は不安定であり、デフレの継続や、株安、円高、原材料高なども下押し要因となる。
景気予測DIは「1カ月後」(32.3、当月と同水準)、「3カ月後」(32.9、当月比0.6ポイント増)、「6カ月後」(32.8、同0.5ポイント増)となった。
国内景気は回復基調を維持するとみられるが、回復ペースは減速する可能性がある。