2010年10月の景気動向調査
景気DIは31.5で3カ月連続悪化、国内景気は踊り場局面入り
< 2010年10月の動向 : 踊り場局面 >
2010年10月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.2ポイント減の31.5となり、3カ月連続で悪化した。
業界別にみると、『製造』(33.4)や『小売』(29.6)、『サービス』(32.4)など10業界すべてが、2009年12月以来、10カ月ぶりにそろって悪化した。
特に、『製造』は食品や衣料、電機、機械、自動車関連をはじめとして全12業種が悪化した。また、『小売』でも自動車関連が2カ月連続で大幅に悪化したほか、家電やスーパー・百貨店関連業種なども悪化した。円高や外需の減速に加え、内需が脆弱ななかでの政策支援終了も大きな下押し要因となっている。
国内景気は回復力が急速に弱まっており、踊り場局面に入っている。
① 円高の進行や外需の減速により、『製造』は全12業種が悪化し、3カ月連続で悪化
・日銀は5日、実質的なゼロ金利や量的緩和など包括緩和政策の実施を発表したが、円高の進行を食い止めるには至らず、1ドル=80円台に突入し、輸出企業の収益性は厳しさを増した。米内需の低迷など外需の減速も影響して、「電気機械製造」(37.1)や「輸送用機械・器具製造」(38.4)が悪化するなど『製造』は全12業種が2008年12月以来、1年10カ月ぶりにそろって悪化し、3カ月連続の悪化となった。
②政策支援の終了で、「自動車・同部品小売」はリーマン・ショック時を下回る水準に急落
・エコカー補助金の終了(9月7日)により、「自動車・同部品小売」(22.4)は前月比9.5ポイント減となり、補助金終了前の2010年8月(42.7)と比べ、わずか2カ月間で20.3ポイント悪化し、リーマン・ショック時を下回る水準に急落。そのほか、関連する機械・部品メーカーや卸売、サービスなど幅広い業種にも影響を与えた。
・「家電・情報機器小売」(33.3)は、政府が家電エコポイントを12月よりほぼ半減する方針を10月8日に固めたことで、高価格帯の薄型TVなどに駆け込み需要が増加したにもかかわらず、消費意欲の低迷により業種全体では悪化した。
< 今後の見通し : 踊り場局面 >
企業はアジア需要の取り込みを強化している。こうしたなか、羽田空港の新国際線ターミナルが開業(10月21日)し、物流の活性化や外国人観光客の増加などが期待されるほか、日本とインドのEPA(経済連携協定)が合意に至った(同25日)。また、2010年度補正予算案が閣議決定(同26日)され、雇用の回復にも期待がかかる。
しかし、足元では輸出が減速傾向にあり、レアアースの輸出規制や反日デモなど中国リスクを再認識させる動きも目立ち、円高や資源高、デフレなども先行き不透明感を増幅させている。貿易交渉においても、韓国とEUがFTA(自由貿易協定)に正式署名するなど日本は依然として出遅れており、一段の競争力低下が懸念される。
景気予測DIは「1カ月後」(30.8、当月比0.7ポイント減)、「3カ月後」(29.4、同2.1ポイント減)、「6カ月後」(30.8、同0.7ポイント減)となった。
国内景気は踊り場局面が見込まれるが、これまでの回復はやや打ち消され、リーマン・ショック時(2008年9月:29.3)を下回る水準に逆戻りする可能性もある。