2015年10月の景気動向調査
悪化傾向は一服も、業種による格差拡大
■調査結果のポイント
- 10月の景気DIは前月比0.2ポイント増の44.8となり、3カ月ぶりに改善した。住宅着工戸数の増加傾向が内装工事など関連業種へと波及してきた一方、海外経済の減速による輸出の減少は景気を下押しする要因となった。国内景気は、悪化傾向が一服したものの、業種による景況感の格差が一段と拡大している。今後は、緩やかに上向いていくと予測されるものの、一進一退で推移するとみられる。
- 業界別では『建設』『卸売』など5業界が改善した一方、『小売』『運輸・倉庫』など3業界が悪化した。秋冬物の衣類販売が堅調なほか、訪日旅行客の増加によるビジネスホテルの改修などで景況感が改善した一方、実質賃金の伸び悩みや家電商品の冬モデル発売を前にした買い控えなどで個人消費関連は低調となった。
- 地域別では、『北関東』や『中国』など5地域が改善、『北海道』や『北陸』など4地域が悪化、『東海』が横ばいだった。『北関東』は前月の集中豪雨による影響が徐々に和らいできたほか、『中国』では設備投資が堅調で製造を中心に全体を押し上げた。一方、『北海道』は公共工事の減少などが響き、大幅な悪化となった。
< 2015年10月の動向 : 景況感の業種による格差拡大 >
2015年10月の景気DIは前月比0.2ポイント増の44.8となり3カ月ぶりに改善した。
10月は、住宅着工戸数の増加傾向を受けて、内装工事や電気配線工事など関連業種へと波及してきた。また、前月まで景気を悪化させる一因となっていた天候が安定したこともプラス材料になった。ガソリンや軽油価格の低下は企業のコスト負担を抑制する要因となっている。一方、国内自動車生産の低迷で設備投資意欲の弱含みが続いたほか、5月以降の公共工事の減少は土木関連の景況感を悪化させる要因となった。さらに、海外経済の減速が鮮明となっており、中国やASEANなどアジア向け輸出は低調に推移した。
国内景気は、天候不順などの悪材料が低減したことで悪化傾向は一服したものの、業種による景況感の格差が一段と拡大している。
< 今後の見通し : 一進一退で推移 >
中国経済の先行きに対する不透明感により、輸出や設備投資を抑制することが懸念される。また、米国は7~9月期成長率が低調だったことに加え、今後の金利引き上げによる経済への影響を危惧する見方が広がっており、年内は海外経済の動向に懸念が残る。米国シェールオイルの減産見通しや底堅いエネルギー需要などにともなう原油価格の上昇懸念や、人材不足による人件費の上昇など企業のコスト負担が増すことも悪材料となろう。他方、年明け以降は雇用者数の増大とともに所得の増加が期待されるほか、次回の消費税率引き上げにともなう駆け込み需要が、2016年度初め頃から住宅や高額耐久財などで発生すると見込まれる。
今後の国内景気は、年明け以降に緩やかに上向いていくと予測されるものの、賃金上昇は実感に乏しいものとなり、一進一退で推移するとみられる。