小さなゆりかごから大きなゆりかごへ

2012年04月04日

熊本県熊本市の慈恵病院が設置した「こうのとりのゆりかご」は乳幼児の養育が困難な親が子どもを匿名で預ける「赤ちゃんポスト」として報道され、設置前から賛否両論となっていた。医師や有識者らでつくる熊本市の専門部会は、「こうのとりのゆりかご」が設置された2007年5月から2011年9月末までに預けられた81人について検証し、報告書をまとめて幸山政史市長に提出した。


報告書では、母子にとっての緊急避難として機能しているとする一方で、留学願望や仕事の多忙を理由として安易に利用されている面があることや、最後まで匿名を貫くことは容認できないとし、実名化を前提したとした上で利用者の秘密を守るといった手法についても検討する必要があると提起している。


「こうのとりのゆりかご」は「赤ちゃんポスト」と報道されていることもあり、育児が困難な状況の赤ちゃんを預ける施設というイメージが先行しているが、赤ちゃんとお母さんの将来の幸せのために相談を行うことを第一の目的としている。


赤ちゃんを預け入れられるポストとして報道されることで、偏った認識が広まり、安易な預け入れを促してしまっていることもあるのではないか。預け入れは最後の手段であり、育児などの悩みを相談できる場所という認識を広めたい。また、預け入れが少なからず発生しているのは、母親ひとりにかかる負担が非常に大きく、子どもを一時的に預けられる施設や周囲、地域、国などからのサポートが不足していることの表れでもある。パートナーの協力や一定の所得がないと産めない、育てられないからこそ日本は少子化に進んでいる面もある。地域や社会で子どもを育てるというシステムの確立が必要だ。


「こうのとりのゆりかご」に預けられた子どもたちの今後の幸せを願うとともに、利用されることのない社会が築けるよう、官民挙げて変えていかなくてはならない。

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