住民の幸福度を測って施策に活かす

少し前の話になるが、2011年11月にブータン国王夫妻が新婚旅行で日本を訪れた。国王が親日家であることも手伝ってか、当時はちょっとしたブータンブームにもなった。この時、注目を集めたのが"ブータンは幸せに満ちた国だ"という話である。実際、ブータンが2005年5月末に行った国勢調査では「あなたは今幸せか」という設問に対して国民の45.1%が「とても幸福」、51.6%が「幸福」と回答した驚きの結果となった。恥ずかしながら、経済の豊かさや生産性だけでなく、「国民の幸福度」という尺度もある、ということを改めて思い出させてくれた出来事である。


さて、「幸福度研究」という研究がある。これは人々が幸福と思うその理由や根源、それを支えるものについての研究分野である。日本では、2001年より内閣府経済社会総合研究所が研究を行っており、2010年6月に閣議決定された『新成長戦略~「元気な日本」復活へのシナリオ~』では、幸福度指標作成が盛り込まれた。なぜ幸福度研究が大きく取り上げられるようになったのだろうか。今までのように経済指標や投資額、道路の整備メートル数、公園の数、交通量などによって、住民の満足度を測るには限界がある。これまで政策などにおいて焦点とならなかった「住民がどういう気持ちで暮らしているのか」に着目し、満足度をすくいあげる手法として、「幸福度研究」が注目されてきたのだろう。住民が「何を持って幸せを感じているのか」を指標化し、その幸せを維持、向上させていくアクションは、自治体にとって住民の幸せ(満足度)を実現するための新しいアプローチになると考えている。


この幸福度に関する取り組みはすでにいくつかの自治体で実施されている。東京都荒川区では、荒川区自治総合研究所を設置して「荒川区民総幸福度(GAH)に関する研究」に取り組んでいる。区民の幸福度指標を作成し、幸福を実感できる「協力社会」を実現するための研究である。ちなみに調査の結果では、地域活動や行事に参加している人や社会に貢献していると感じている人ほど、幸福度が高い傾向にあるそうだ。京都府でも、府民の「満足度」を測るため、統計データと「京都府民の意識調査」を合わせて「京都指標」を作成した。今後、府政の方向性が府民の意識と乖離しないよう、この指標を元に検証していくとされている。その他、熊本県「くまもとの夢4カ年計画」、福岡県「幸福度に関する研究会」など、各地で"住民の幸福"を指標化するさまざまな取り組みが行われている。さらに福井県など12県知事で構成する知事ネットワークでは、「ふるさと希望指数」の研究が行なわれている。これは「幸福度」に加え、将来の実現を願う度合い「希望度」も同時に測る取り組みである。


地元住民の気持ちや幸福度、希望をくみ取って、これらに寄与する施策を考えること。これは本来の行政のあり方であり、こうした取り組みが今後もどんどん広がって欲しいと強く思っている。

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