経常収支の赤字化は避けられないのか

財務省が発表した1月の貿易統計によると、輸出は5兆2,529億円、輸入は8兆429億円で、過去最大の貿易赤字となった。輸出は自動車や有機化合物、鉱物性燃料などが寄与し前年同月比9.5%増と11カ月連続で増加した。しかし、輸入は原粗油や液化天然ガス、半導体等電子部品が大幅に増加したことで、同25.0%増と過去最大の輸入額となった。輸入急増の背景には輸入数量自体が同8.0%増加していることに加えて、為替レートが同20.2%の円安となったことがあげられる。


地域別にみると、対米国では輸出1兆236億円(同21.9%増)、輸入6,564億円(同25.9%増)、対EUでは輸出6,111億円(同20.2%増)、輸入6,997億円(同20.2%増)、対アジアでは輸出2兆7,027億円(同5.8%増)、輸入3兆6,691億円(同27.2%増)、うち対中国では輸出8,626億円(同13.1%増)、輸入1兆9,074億円(同34.4%増)となっている。米国を除くいずれの地域に対しても貿易赤字であり、特にアジアや中国に対しては過去最大の赤字額であった。


日本の貿易総額は2000年代以降、リーマン・ショック後を除きほぼ一貫して増加しており2013年は144兆円にのぼる。しかし、貿易収支は2011年以降3年連続赤字である。他方、海外への投資収益である所得収支は黒字の拡大を続けている。そのため、現在の経常収支は過去に行った海外投資に支えられている状況といえ、直近では3カ月連続で赤字が続いている。


経常収支が赤字になるということは、日本が海外に支払う資金がふくらみ、それだけ日本全体での資金繰りが窮屈になることを意味する。当面は外貨準備の取り崩しでしのぐことはできても、それが難しくなるだろうと海外から思われた瞬間に、為替市場や株式市場、国債市場が混乱し、実態経済にも悪影響が及ぶことになる。


ESPフォーキャスト調査では、日本のエコノミストの大半が数年以内に貿易収支が黒字に転換することはないと考えている。中長期的に経常収支が赤字化することは避けられない状況である。基本的に経常収支は国内の貯蓄動向に依存するが、経常収支を黒字化するためには少子高齢化が進むなかでの家計貯蓄率低下を抑制するとともに、政府の財政赤字を削減することが正面からの対策といえる。高齢者人口の増加を前提とするなかでは、現役世代の所得増加を図ることで家計貯蓄率の低下を抑える、また財政赤字の削減に向けてまずは基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成することが重要である。いずれも、景気の回復が最大の処方箋であることは言うまでもないだろう。

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