消費税増税、価格転嫁と反動減はどうなる

4月に消費税率が引上げられて以降、次の焦点は増税分がきちんと価格に転嫁されているか、また、反動減がどの程度続くのかという点に移ってきた。


まず、価格への転嫁状況についてみると、総務省が4月25日に公表した東京都区部の消費者物価指数(4月中旬速報値。全国の消費者物価指数の先行指標とされる)は、生鮮食品を除く総合指数で前年同月比2.7%の上昇であった。3月が同+1.0%であったことから、概ね1.7ポイント拡大したことになる。これは、日本銀行などが試算した増税による指数の押し上げ幅と一致しており、増税の影響を除いた物価の上昇幅は3月と比べほぼ横ばいだったとみられる。
品目別では、割引制度が縮小・廃止された高速自動車国道料金が同+41.1%、傷害保険料が同+10.1%、洗濯用洗剤が同+9.5%などが大きく上昇した。また、エアコンや電子レンジなど家庭用耐久財は同+5.9%だったものの3月(同+8.4%)より上昇幅が縮小、なかでも電気掃除機は-24.8%と大幅に低下し指数を押し下げる要因となった。


価格転嫁の状況については、4月24日に経済産業省から「消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査(WEB調査)」(委託先:帝国データバンク)の4月結果が公表された。その結果によると、事業者間取引では79.4%、消費者向け取引では72.1%の事業者が消費税率引上げ分を"全て転嫁できている"と回答している。一方、事業者向け取引において"一部を転嫁できている"が14.0%、"全く転嫁できていない"が3.7%と、2割弱の企業が増税分の全部または一部を負担している。


他方、反動減がどの程度続くかについては、大多数の企業が6カ月以内で終わると考えている。詳細は「2014年度の業績見通しに関する企業の意識調査」(帝国データバンク。5月19日リリース予定)をご覧いただきたいが、消費税増税による反動減の影響は今秋までには落ち着くと捉えて良いだろう。


17年ぶりの消費税率引上げは経済活動に多大な影響を与えることは明らかである。事実、4月の「TDB景気動向調査」では昨年から続いていた駆け込み需要の積み上げが一気に剥落し、過去最大の落ち込みを記録した。今後は、徐々に消費税ショックも和らいでいくとみられるが、企業活動に与える影響を極力抑える必要がある。これは、企業間取引、政府による政策、消費者向け取引などさまざまな場面での要素が絡んでくる。そこでは、企業に関わる一人一人がいかに先行きを見通し、判断するかが消費増税後の経済を乗り切るカギになるであろう。

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