アベノミクス、いまが正念場

消費税率引き上げ以降、消費者物価の上昇とも相まって、家計の購買力が低下している。8月の現金給与総額はベースアップやボーナスなどを反映して前年同月比1.4%増と6カ月連続でプラスとなったが、物価上昇分を除くと同2.6%減と14カ月連続で減少している(厚生労働省)。


家計の購買力低下は、生活水準の低下をもたらしてもいる。8月の家計調査(総務省)をみると、生活水準を表す指標である"消費水準指数"は91.7(同4.5%減、2010年=100)となっており、4月以降5カ月連続で減少している。とりわけ家計は生活必需品を切り詰めていることが顕著に現れている。食料や家賃、光熱費、保健医療サービスなどの生活必需品を表す"基礎的支出"をみると、8月は同1.4%減、物価上昇を考慮すると同5.6%減となっており、贅沢品に分類される"選択的支出"よりも支出を減らしているのである。


9月のTDB景気動向調査(帝国データバンク)においても、『小売』や『サービス』の景況感が悪化しており、家計が節約志向を強めていることがうかがえる。特に、自動車販売関連や飲食関連の落ち込みが目立つ。


安倍首相は、消費税率10%への引き上げの可否を12月に判断するとしているが、実質所得の低下による個人消費の冷え込みは今後の景気動向に大きな懸念材料として残る。首相が消費税率引き上げの判断基準として捉えている7月から9月の経済状況は、個々の業種で違いはあるものの、総じてみると芳しくなかったといえよう。


景気対策に頼ることなく、企業の収益改善→雇用拡大・所得上昇→消費拡大→企業の収益改善、といった経済の好循環が実現するためには、いまが正念場と捉えるべきである。そして、本格的な経済成長の達成には企業や個人が主体となった自律回復があってこそ可能なのであり、そのときに初めてアベノミクスは成功したと言えるであろう。

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