転嫁Gメン登場

私が日頃からお世話になっている会社に、消費税転嫁対策調査官(通称、転嫁Gメン)が突如、来社したそうだ。2人一組でやってきて、「取引先に対して、消費税率の引き上げ分の代金を支払わなかったことで、取引相手に税負担を押し付けている可能性があるため立ち入り検査をする」と、来社の理由を述べたという。


公正取引委員会と中小企業庁は、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、様々な施策を実施しており、その一つが"転嫁Gメン"である。買手側が自身の優越的地位を利用して消費税率引き上げ分の価格転嫁を拒否するケースなど、買手側の転嫁拒否行為を厳しく取り締まっている。


経済産業省の公表によると、今年10月までに、3,061件の"疑わしい先"を調査し、うち1,389件を指導、11件を勧告した。指導事例では、消費税込みの委託代金を消費税率引き上げ後も据え置いたというケースが多いという。なお、勧告は公正取引委員会のみが行っており、勧告を受けた企業は社名を公表されることとなる。その社名を見ると、どこも有名な企業ばかりであり、優越的地位にあったということが容易に想像できる。


さて、前述の会社は従業員十数名の小規模経営であり、取引先も数える程度しかない会社であったため、転嫁Gメンの相手をした社員も大変驚いたそうだ。最終的に、立ち入り検査で同社の疑いは払拭されたのだが、少しでも疑いがあれば小規模経営企業にまで立ち入り検査を行う転嫁Gメンは、消費税転嫁対策の本気度の象徴と言えよう。

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