ペーパードライバーが「自動運転」に実現してほしいこと

2016年のキーワードとして「自動運転」が注目されている。ここにきて、米電気自動車「テスラモーターズ」が、日本の公道でも自動運転が可能と発表したことも関心が高まっている一因だろう。


昨年来、「自動運転」に関する報道を目にする機会が一気に増えた背景には、国土交通省と経済産業省が2015 年2 月に「自動走行ビジネス検討会」を設置し、同年6月に中間とりまとめを公表、同年9月から「自動走行ビジネス検討会将来ビジョン検討ワーキンググループ」を立ち上げ、自動運転実現に向けた取り組みについて産学官で具体的に検討を開始したことがある。


すでに3回開催されているワーキンググループの議事内容を見ると、検討内容は自動走行の将来像とその実現に向け、2030 年頃までの実用化が期待され産学官が連携して取組むべきアプリケーションの特定、「技術」と「制度・事業環境」の課題に関する認識の共有とあり、その対象はあらゆる分野に及ぶ。


高速道路での自動走行を想定した課題だけでも、「自動走行導入効果評価」「高精度地図」「通信」「かじ取装置に係る規則」「ドライバーモニタリング」「ドライバーの姿勢・状態」「HMI」「デッドマンシステム」「社会受容性」「認知技術」「判断技術」「機能安全」「車載システム」「高速演算処理技術」「自動走行用テストコース」「ダイナミックマップ」「位置標定」「倫理」「運転委譲手続き」「自動車保険制度」「車両に関する安全基準」「運転責任/事故時責任」「交通ルール」「自動車免許制度」などが列挙され、その実現のためにクリアすべき課題は多い。


こうした自動運転の実現を目指す目的には、交通事故の削減がある。2015年の交通事故死は4,117人(警察庁発表)となり、かつて交通事故による死者が1万人を越え「交通戦争」と言われた時代と比較すると、1996年に1万人を下回って以降、減少傾向が続いている。しかし、交通事故による死者数が減少する一方で65歳以上の高齢者の占める割合は54.6%と、統計開始の1967年以降で最も高くなっており、高齢化社会が急速に進行する今の日本では、高齢者を想定した交通事故削減策は喫緊の課題となっている。


ただし、ペーパードライバー歴20余年の立場からすると、自動運転で実現してほしい別のポイントがある。昨年度、一年間だが東京から地方に赴任し、移動は全てクルマという環境に身を置いた。地元自動車学校のペーパードライバースクールに通い、同僚上司の叱咤激励もあり、なんとか運転できるようになったものの、一番の難関は想定していた高速道路ではなく、実は駐車だった。


繁華街の金融機関やコンビニエンスストアの駐車場は狭いうえ変形なことが多く、いったんやりすごしてまた戻り、周囲を見ながら恐る恐る停めて、恐る恐る出ていたのが現実だ。公共施設や商業施設の混雑する駐車場もしかり。何度も順番を譲ってもらい、親切を身にしみて感じたことも多かった。


自動運転で、広大な自然の中を伸びやかな気持ちで走行するのも、大都市の高速道路をスタイリッシュにドライブするも確かに素敵だろう。ただし、同時にぜひとも実現してほしいのは、狭い国土の日本の狭い駐車場での「自動駐車」だ。事故減少につながり、楽しく安全なカーライフへの参入者増にもつながると思うのだが、いかがだろうか。すでに一部の車種では導入されているとも聞くが、より広範囲の気軽に乗ることができる車種で導入されるよう、関係者のみなさん、ぜひとも、よろしくお願いします。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。