消費税率引き上げの再延期も視野に

景気動向を取り巻く国内外の経済状況が芳しくないなか、2017年4月に予定されている消費税率引き上げを再延期すべきとの論調が拡大している。TDBマクロ経済予測モデルで先送りした場合の影響を試算したところ、2016年度の駆け込み需要がなくなる一方、2017年度の実質国内総生産(GDP)成長率を0.4ポイント押し上げると試算された。


アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という、三本の矢を軸としてスタートした。しかしながら、これまでのところ政策としては金融緩和に過度に依存した形となっており、第二、第三の矢に対する効果が不足している状況といえよう。とりわけ、地方への波及力は弱く、1月と2月のTDB景気動向調査でも東日本大震災以来となる2カ月連続全10地域悪化という事態に至った。


このような経済状況の下、首相官邸で開かれた国際金融経済分析会合において、首相の経済ブレーンや国内外の専門家から「消費税率引き上げは先送りすべき」という意見が相次いだのも自然の成り行きといえる。


日本銀行が導入したマイナス金利によって金融緩和政策は一層強められることとなったが、マイナス金利政策は万能薬ではない。金融政策は財政政策とともに実施してこそ、その効果を最大限に発揮することができる。日本の財政は1,000兆円を超える長期債務残高を抱えている。財政出動によって残高は増加するものの、それ以上にデフレから脱却する方がより重要である。GDP成長率がマイナスに転じ、物価上昇率もマイナスに舞い戻るようなことが起これば、再びデフレ経済が到来してしまうことになりかねない。そのような事態になれば、失われた20年をまたしても繰り返してしまうことになる。


日本経済の現状は、消費税率を引き上げるタイミングではないといえるだろう。

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