生産性を向上させるには個人の力?それともチームの力?

生産性を上昇させるのは個人の力だろうか?それともチームの力だろうか?経営における人的資源管理が生産性に影響を与えることを明らかにした研究は数多くある。とりわけ、労働者個人に対してではなく、複数の労働者で構成されるグループに対してインセンティブを与えることで生産性の上昇がもたらされることが、多くの実証研究で明らかとなってきている。


これは、労働者間での知識や技術のスピルオーバー(漏出、拡散)が生じたり、社会的な規範・プレッシャーが存在することによる。企業ではこれらの研究結果を踏まえ、労働者個人ではなく、チームにインセンティブを与えることで生産性の向上を図る動きもある。


また、チームにおける最適な性別の構成を明らかにする研究も蓄積されており、男性と女性では生産性を向上させるチーム構成に大きな違いがある。つまり、男性は女性が同じチームにいる方が生産性が高くなるのに対し、女性は女性のみのチームの方が生産性が高いということが示されている。また、チームの構成人数にも影響されることが分かっている。


最近、このようなテーマで興味深い論文を読む機会があった。中室牧子・萱場豊「チームか、個人か:インセンティブが子どもの学習生産性に与える効果」(2016)であるが、本論文では、上記の知見が子どもの学習にも当てはまることを実証的に確認している。


この論文によると、チームで学習した子どもは、個人で学習した子どもよりも学習生産性が14~20%も上昇していた。また、男女別では、男子はチームの方が学習生産性が圧倒的に高くなるのに対し、女子は個人で学習した子どもと差がみられなかった。ただし、男子は、労働と異なり、男女混合のチームより男子のみのチームでより生産性が高くなっている。また、構成人数は3~4人よりも多い方が効果的である。したがって、1.学習においてもチームを組んで課題に取り組むことの効果は大きく、2.チームにおける生産性を高めるには学年や性別など異質性の高いチームよりも同質性の高いチームの方が良い、ということがいえる。


これらの結果は示唆に富んでおり、また、企業の労働生産性を高める大きなヒントも含んでいる。企業におけるジョブトレーニングと自己研鑽活動などに応用できる可能性を持っているといえるだろう。

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