オリンピックと屋内全面禁煙

メダル続出で盛りあがったリオ・オリンピックに続き、9月7日(現地時間)にはパラリンピックが開幕する。これらの熱戦が4年後に東京にやってくるのを前に、都内ではあちこちで2020年に向けての再開発やビル建設現場が目立つ。ハード面を含めこれから一気に整備が進められていくことになるが、そのなかで注目されているのが、五輪開催を機に屋内禁煙の全面禁止が実現するかどうかという点だ。


都内ではすでに公共施設や路上での禁煙は実現し、大規模なオフィスビルなどでは喫煙室や屋外での喫煙コーナーが設定され、喫煙者、非喫煙者のすみ分けは進んできた。厚生労働省の「国民健康栄養調査」によると、1989年(平成元年)の成人喫煙率は男性が55.3%、女性が9.4%であったが、2013年(平成25年)には男性32.2%、女性は8.2%と、この24年間で男性の喫煙率は23.1ポイントも減少。男性の喫煙者は、過半数から3人に1人にまで減った。背景には、自身の健康のためだけではなく、受動喫煙による健康被害への関心の高まり、たばこ税増税などがあげられるだろう。


しかし、一方で多くの人が集まる場所ながら、飲食店などでは禁煙だけではなく分煙すら実施していない店舗も多い。喫煙率が下降傾向にあるとはいえ、喫煙者に優しい喫煙大国と言われるゆえんだ。2003年に施行された「健康増進法」では第25条で、多数の者が利用する施設の管理者に対し、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう求めているが、罰則はなく努力義務にとどまっている。


五輪では1988年に国際オリンピック委員会(IOC)が禁煙方針を採択、「スモークフリー・オリンピック」を掲げ、会場の禁煙化が実現している。近年の開催国または開催都市では禁煙や分煙について「罰則規定付の法律・条令」が定められ、喫煙率の高いロシアや中国でも実施された。


日本政府は、今年1月にようやく「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関係府省庁連絡会議」の下に「受動喫煙防止対策強化検討チーム」を発足させた。東京都では、小池新知事が就任後のインタビューで対策に前向きな姿勢を見せる。


対象施設や地域、罰則の有無や罰則対象者など検討項目は多く、利害関係も広範囲に及ぶだろうが、タイムリミットはあと"わずか"4年だ。「スモークフリー・オリンピック」が継続できるかどうか、喫煙大国日本の姿勢が問われている。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。