「○○の秋」と家計支出

季節は秋である。秋といえば、「味覚の秋」や「読書の秋」などさまざまな「○○の秋」がある。
そこで、秋の季節感を家計支出の視点から考察してみた。


まず、「味覚の秋」として"サンマ"を考えてみよう。サンマは夏から秋にかけて、オホーツク海など北の海から日本列島を囲うように通過し、冬には南の海へと移動する。最も脂が乗り味も良いといわれているのが南下する秋のサンマである。では、家計は"サンマ"をどれほど購入しているのだろうか。


家計調査(二人以上世帯、総務省)によると、2014年~2016年の3年間における"サンマ"への平均支出額は1カ月あたり99円であった。最も支出額が多い月は9月の402円、次いで10月(278円)、11月(128円)、8月(126円)となっており、「味覚の秋」としての面目躍如といった結果であろう。


次に、「読書の秋」はどうだろうか。同調査によると、"書籍"への支出額は1カ月あたり平均666円であった。最も支出額が多いのは12月の840円で、次いで3月(801円)、4月(704円)が続く。クリスマスに絵本をプレゼントしたり、進学・進級や就職の時期に書籍を購入する人も多いのかもしれない。また、4月は書店員の投票で決まる「本屋大賞」が発表されるタイミングでもある。


さらに、続いて8月(673円)、7月(664円)、1月(651円)という支出額順となっている。1月と7月は芥川賞・直木賞の発表月であるが、同月は支出額でみると、1カ月あたり平均を下回る額にとどまっている。


では、秋(9~11月)の支出額はというと、11月(618円)、10月(610円)、9月(595円)の順であった。特に、9月は2月(593円)に次いで2番目に少ない。もちろん、7~8月に購入した書籍を秋に読むという可能性も考えられるが、「読書の秋」からくるイメージからは意外と感じる金額であった。


「読書の秋」は、中国・唐中期の文学者・思想家である韓愈(かんゆ)が残した詩のなかにある『灯火親しむべし』(涼しく夜の長い秋は、灯火の下での読書に適している)という言葉に由来しているという。平安時代の日本が、唐文化を取り入れるなかで、読書に向いているのは秋という説が日本人に浸透したものと考えられている。


10月下旬からは「読書週間」もはじまる。秋の季節をしっかりと感じ取りながら日々を過ごしていこう。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。