問題は本当に人手不足か?

昨今、人手不足で仕事が回らないと訴える職場は多い。しかし、本当にその原因は人の不足によるものだけなのだろうか――。


私は最近、人材の活躍推進、高齢者雇用などをテーマに企業取材や調査を続けてきた。いずれの企業でも人手が足りず、それを補うために、さまざまな工夫を重ねているのがわかる。雇用条件を整備し、新規に雇い入れ、人材が流出しないよう学校を卒業したばかりの新入社員相手に叱り方ひとつとっても過敏すぎるほどの配慮をしている。


それでも定着率が悪い若年者の雇い入れだけでは間に合わず、女性やシニアの採用や登用、柔軟な就労形態の導入・開発が盛んに叫ばれている。


人材採用に関する総合サービス会社であるリクルートジョブズによると、近年の求職者は1日8時間ではなく、より短時間の勤務を希望する人が増加しており、また求人側としても1日1~3時間程度の労働に対する需要が増加しているという。


こうした情勢を背景に人材派遣のフルキャストホールディングスでは、2017年3月に団塊の世代を含むシニア層を対象とした人材サービス会社を設立。企業が1日単位、2時間からの依頼を可能とした。今後、人手不足の解消にむけてどのように機能するのか見ていきたいと思う。


このように、人手不足解消へ向けて各段階で取り組みが進んでいるが、一方で、経営者からはこうした声も聞こえてくる。


「社内の全員が忙しいわけではない。周りがバタバタ立ち回っているなか、暇にしている人たちはけっこういる。」


本当に問題なのは人手不足なのか。責任者の適正、業務フロー、担当者と業務のマッチング、チームビルディングなどについて、再度個別に点検してみると、恐らく多くの組織で人手不足の解消につながる改善すべき点がいくつも見つかるのではないだろうか。

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