内閣支持率と景気の関係

各種世論調査によると、安倍内閣の支持率が低下している。内閣支持率は、通常、新内閣が誕生したときに高く、時間が経過するにつれて徐々に低下していくが、その他にもさまざまな理由で変動すると考えられる。


帝国データバンクによる2018年3月の景気DIは前月比0.1ポイント増の50.4となり、2カ月ぶりに改善した。過去の景気DIの水準からみると、比較的高い水準を維持しているものの、2018年2月以降は足踏み状態といった状況である。


こうしたなか、海外情勢をみると、トランプ米大統領が発動した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限や対中輸入関税措置など、保護貿易主義の高まりが今後、世界の貿易取引に悪影響を与える可能性が懸念されている。


そこで、景気動向調査が始まった2002年以降の内閣支持率と景気について、どのような関係があるか分析したところ、在職月数が長くなると支持率は低下するものだが、首相の在職月数の影響を除いた場合でも、内閣支持率が上がると景気動向が改善するという関係にあることが確認された。


また、内閣支持率と景気動向は相互依存関係にあるものの、因果関係について確認すると、内閣支持率が上がると景気動向が良くなるという方向がより強くみられた。


この結果から、政府は国民の支持を背景にさまざまな政策を積極的に打ち出すことで経済にプラスの効果をもたらす一方、支持率が低下してくると政策の法律化や執行が遅れることで、経済にマイナスの影響がおよぶ可能性があると解釈することもできよう。


現在の日本経済は、依然として輸出頼みの状況が続いており、個人消費など内需を中心とした自律的な回復過程には至っていない。また、いまだインフレ目標を達成できていないなかで、マイナス金利政策など非伝統的な金融政策が続いており、対外的なショックに対して、柔軟な金融政策を実施するための手段が限られている状況である。


日本経済がこうした状況下にあるなかで、政局の混乱にともなう経済政策の停滞を許容する時間的余裕は残されていない。

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