海賊版サイトから著作権をどう守るか?

トランプ米大統領は2018年3月、知的財産権の侵害などを理由に、中国に対して高関税の制裁措置をとる方針を決めた。知的財産権には「著作権」も含まれるわけだが、今、日本のコミック市場は「著作権侵害による被害」が大きな問題になっている。


出版科学研究所によると、電子版を含めた2017年のコミック(単行本およびコミック誌の合計)の推定販売額は、前年比2.8%減の4,330億円だった。媒体別では紙が同12.8%減の2,583億円、電子版が同17.2%増の1,747億円となっており、紙の減少分を電子版がカバーする構造となっている。単行本に限ってみれば、すでに電子版の市場が紙の市場を上回っており、今のコミック市場は電子版によって支えられている状況にある。


しかし、一見好調に見える電子コミック市場も問題を抱えている。伸び率が大きく鈍化しているのだ。2016年電子コミック市場の伸び率が前年比27.5%増であったのに対し、2017年の伸び率は同17.2%増にとどまった。背景には、過去作品の電子化が出尽くしつつあるといった業界自身の問題に加えて、コミックを無断でネットに掲載し、無料で公開している海賊版サイトの存在がある。


こうした海賊版サイトは、新作が迅速に公開されることや、登録不要のため誰でも利用できることなどから、多くの利用者を集めている。その利用を拡大させているのが、海賊版サイトの情報を取りまとめ、利用者をそこへ誘導する「リーチサイト」の存在だ。リーチサイト自体は、違法コンテンツを直接掲載しているわけではないため、現状取り締まる法律もなく、野放しになっている。それどころか、著作権を侵害された漫画家などが利用をやめるように声を上げたところ、それが海賊版サイトの宣伝になってしまったこともあった。


リーチサイトを含む海賊版サイト問題に対し、日本漫画家協会は「海賊版サイトについての見解」を表明。政府もこの問題を看過できず、菅義偉官房長官は会見で海賊版サイトへの接続遮断を含めたあらゆる方策を検討していると述べた。


問題が拡大していくなかで、新たな法整備が必要になっているとともに、海賊版サイトの利用者には若い世代が多いという特徴を踏まえると、インターネット利用者側への知財教育を進める必要があるのかもしれない。

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