変わる日本の対外収益

日本が海外から稼ぐ方法が大きく変化している。2017年の経常収支は21兆9,514億円の黒字となっている(財務省・日本銀行「国際収支統計」)。そのうち保護貿易主義の拡大などで注目される貿易収支は、東日本大震災以降、赤字が続いていたが、原油価格の低下などを受けて2016年に黒字へと転換した。


2017年の経常収支黒字額のうち、19兆8,374億円は第一次所得収支が占めた。これが第一の要因である。第一次所得収支は直接投資収益と証券投資収益が主となるが、近年は直接投資収益が拡大している。なかでも、配当金・配分済支店収益と再投資収益が直接投資の黒字を支えてきた。


また、直接投資収益を地域別にみると、アジアからの収益が5兆2,006億円と大きく拡大しており、北米の6兆4,126億円に次ぐ高さである。その他、中南米も3兆円超となっているが、その多くはタックスヘイブンとして有名なケイマン諸島が占めている。その金額は2兆4,506億円で、ASEANより大きく、EUに迫る規模である。さらに、アジアを国別にみると、中国とタイで半分を占めており、日本企業が多く進出している両国において、機械化需要などが投資を促しているとみられる。


証券投資収益では、債券利子が配当金の7.6倍にのぼり、金融投資では外国債を大量に保有する日本の姿が浮き彫りとなっている。


経常収支の黒字が拡大した第二の要因は、サービス収支の急速な赤字縮小である。内訳をみると、旅行収支が2015年に黒字化、2017年は1兆7,809億円の黒字となっている。日本からの出国者数が概ね横ばいである一方、訪日外客数が急増していることが背景にある。とりわけ、東アジアからの旅行客が多く、航空路線の拡充や大型クルーズ船寄港数の増加なども一因であろう。


サービス収支において、最大の黒字要因は知的財産権等使用料である。2017年は2兆2,905億円に達し、そのうちアジアで1兆1,267億円を占め、さらに中国は5,227億円にのぼる。つまり、中国における同使用料の黒字額は、日本の同使用料の22.8%、経常収支黒字全体の2.4%を占めているのである。知的財産権等使用料は、産業財産権等使用料と著作権等使用料に大別されるが、前者は黒字が拡大するなか、後者は赤字が続いている。著作権等使用料の赤字はソフトウェア使用権料が多額にのぼるためとみられている。米中貿易摩擦の主要議題にあげられている中国における知的財産権の保護は他人事ではなく、日本にとっても非常に重要な懸案事項である。


日本の海外取引の内容はモノの貿易取引から旅行を含むサービスや投資収益へと変化してきている。今後、日本経済が海外から稼ぐ力を高めるためには、海外進出の拡大にともなう直接投資や産業財産権等使用料を強化することに加えて、インバウンド需要を取り込んだ旅行収支の拡大を図ることがより重要となろう。

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