「実家の片づけ」問題を前に子世代が思うこと

「実家の片づけ」問題が、注目されている。大手出版社からムック本が相次いで発刊され、テレビでも特集が組まれ、経済誌までもがテーマとして取り上げている。家族にまつわるセンシティブな問題でもあり公に口にする機会は少ないものの、高齢の親と離れて暮らす壮年世代の多くが抱える悩みとして、解決のためのノウハウが切実に求められているということだろう。


今夏、にわかに他人事ではなくなる事態が到来した。西日本の小さな町で独り住まいの親(70代後半)が、検査の結果そのまま入院ということになったのだ。入院が長期化する中で、退院後に山間部の古い実家で単身生活ができるかどうかということになると疑問符がつく。専門科での定期的な検査や投薬が必要な状況では、ゆくゆくは大規模病院への通院を考えると利便性が高い都市部の親族宅への転居を余儀なくされるだろう。


離れた東京に住む身では頻繁に帰省もできず、かつ、親族も婚家での別の介護問題を抱え互いに身動きがとれない中で、姉妹間の会話でちらちらと相手の出方を見るように「実家の片づけ」問題に言及が始まっている。遠からず具体的に真剣に話し合う時がやってくる。


近時は各種の有料サービスも登場し、介護系の「片付けサービス」から「不用品回収」「リサイクルショップ」などの目的に応じた利用ができる。ただし、目的に応じた業者の選定や、料金交渉、整理の優先順位づけといった細々した実務は、子ども世代が仕切るしかない。


「平成30年版高齢社会白書」によると、平成28(2016)年時点で65歳以上の者がいる世帯数約2,416万5千世帯のうち、最も多いのは夫婦のみの世帯で31.1%を占める。65歳以上の単身世帯の27.1%と合わせると半数を超える。


また、65歳以上人口における一人暮らしの割合を男女別にみると、平成7(1995)年に男性6.1%、女性16.2%であったが、20年後の平成27(2015)年には男性13.3%、女性21.1%に上昇。さらには、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年には、男性20.8%、女性24.5%とされ、高齢者の一人暮らしの増加傾向が顕著だ。その背景には、もちろん未婚率の上昇がある。


今、「実家の片づけ」問題に直面している子ども世代は、まさに未婚率が上昇した世代であり、子どもがいない単身者が珍しくない。高齢者の単身世帯の比率が上昇するなか、「実家の片づけ」問題に苦労するその子世代が老年を迎える時代には、終活の一環として当然のように自らが自宅の整理を依頼する「自宅の片づけ」サービスが定着する時代がやってくるのではなかろうか。

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