亥(い)固まる

日本の相場格言によると2019年は「亥固まる」である。相場格言はいわば理論では説明できない株価の規則的な現象であるが、ただの迷信だと一蹴して良いのか、気になるところだ。


ちなみに、相場格言を全体でみると、"辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる"になる。


干支は古代中国の殷(商)の時代(紀元前16世紀頃~紀元前11世紀)に誕生したと考えられており、"干"にあたる十干(じっかん)と、"支"にあたる十二支を組み合わせたものである。2019年は十干が己(つちのと)、十二支が亥(いのしし)なので、己亥(つちのとい)となる。


十干と十二支は、もともとは植物の成長を例えたもので、己亥とは、

  • 己 → 草木が成長を終えて姿が整然としている状態
  • 亥 → 草木が枯れ落ちて、種の内部に草木の生命力がこもっている状態

を表しているそうだ。


これを人間や組織に例えると、次のように言い換えることができよう。

  • 己 → 成長した個人や組織が、従前の主義や規律、秩序などを見直し、次の段階を目指す準備をすること
  • 亥 → 個人は知識を増やし精神を育て、組織は人材育成や設備投資、財務基盤を固めること

つまり、外に向けての活動よりも、内部の充実をはかり、次のステージに向けた準備を心掛けると良い年になる、ということだろうか。


相場格言通りならば亥年の2019年は「小幅な値動きにとどまる」となるが、日経平均株価は年初から米国の株価変動の影響を受け、大きく上下動する出だしとなった。また、統計が得られる1955年以降の実質GDP成長率を十二支別にみると、亥年は平均4.34%で上から7番目である。高くはないが低くもない、概ね平均に近い成長率だ。


あえて験を担ぐならば、こうした時期に個人や組織の内的な成長をはかり、繁栄の子年に備えるという見方もできるのではないか。迷信かもしれないが。

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