父の定年を機に、定年後の働き方を考える

2019年12月をもって、私の父は定年退職を迎えた。新卒で入社した会社で一筋に働き、60歳になったことで一区切りがついた格好だ。そんな父は、現在は再就職先を探している。当の本人は就労意欲に溢れているようだが、私としては体力面で今のように働くことができるのかとひそかに心配をしている。大きなお世話かもしれないが・・・。


実際にそう考えている人も少なくないようだ。内閣府[1]の調査によると、60歳以降の収入をともなう就労意向として、81.8%が60歳以降も働きたいと考えている。一方で、さらにそのなかで希望する就労形態は、正社員を指す「フルタイムの社員・職員」が24.2%に対し、「パートタイムの社員・職員」は53.9%と、2倍以上にのぼる。このなかには、「今までのようなフルタイムは体力的に厳しいが、パートタイムで無理なく働きたい」という考えによるものも多分に含まれているだろう。


そこで、今後注目を浴びるとみられるのは、「短時間正社員」という制度である。短時間正社員とは、通常の正社員と同等もしくはそれ以上の意欲や能力があるものの、長時間働くことができない人材の活躍を目指している雇用形態である。この制度であれば、待遇は正社員と同様なので、収入面の大きなマイナスを回避できる。


厚生労働省が運営している「短時間正社員制度導入支援ナビ」[2]では、制度の導入手順や運用の方法などが掲載されている。なかでも導入企業の事例を数多く見ることができる点は非常に参考になる。さらに育児支援や介護支援など、導入目的別に事例を探すこともできる。実際に「高齢者雇用」の項目を見ると、シニア社員を貴重な戦力として考えているからこそ導入に踏み切ったという目的が共通していた。ただ、この事例集に掲載されている企業57社のうち、その目的に高齢者雇用を選択している企業は3社にとどまっている。つまり、シニア社員に向けた制度としてはまだまだ普及が進んでいないといえるだろう。


上記の内容を父に伝えてみると、再就職先を探すなかで一つの判断材料にしたいと言っていた。こうしたさまざまな制度は、求職者にとって大きな魅力となるだろう。父は頑張り屋な性格が故に、10年以上前は深夜近くに帰宅することが多々あった。この度の大きな節目にあたり、どうか健康を最優先に、無理なく働き続けてほしいと願っている。そのためには、子である私も存分に支援していく決意である。



[1]平成25年『高齢期に向けた「備え」に関する意識調査結果』
[2]https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/outline/

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