どうなる?日本のデジタル化の遅れ

スイスの有力ビジネススクールIMDが6月16日に発表した「2020年版世界競争力ランキング」[1]において、日本は前年のランキングから4つ順位を下げて、63カ国中34位と過去最低水準となった。


マクロ経済の評価を巡る『経済パフォーマンス』に関しては、11位と高い評価を得たものの、他の3つの分野『政府の効率性』『ビジネスの効率性』『インフラ』のランキングは低迷した結果となっている。とりわけ『ビジネスの効率性』は前年のランキング(46位)から9つ順位を下げ、55位となった。内訳をみると、企業の「ビッグデータの活用・分析」「デジタルトランスフォーメーション」「変化に対する柔軟性や適応性」の低下が目立った。また2019年に同スクールが発表した「2019年世界デジタル競争力ランキング」[2]においても、日本の順位は63カ国中23位にとどまっており、決して高い位置づけではない。なかでも、「デジタル技術スキル」は60位、「企業の機敏性」は63位と評価が低く、総じて企業のデジタル化などという変化への対応の遅れが日本の大きな問題となっていることが明らかになった。


日本のデジタル化の遅れが浮き彫りとなった要因として、当ランキング以外にも「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大があげられる。今回のパンデミックの状況下、企業においてデータや経理・会計業務プロセスなどのクラウド移行やアプリ、人工知能(AI)の活用など、デジタル技術の活用が推進されていればある程度の業務は維持できていたと考えられる。政府が策定する2020年度版「統合イノベーション戦略」の概要案でも、デジタル化・IT化の遅れが感染防止と企業活動、社会活動の両立の足枷であったと指摘しているように、今日デジタル化の重要性が急激に高まっている様子がうかがえる。無論、デジタル化の効力が発揮されるのは非常時だけでなく、平常時においても企業の生産性向上につながり、人手不足問題や人件費の高騰などの解決のカギともなる。


このような状況下で、政府は社会のデジタル化を支える基盤整備を進めると表明しており、民間企業においてもデジタル技術の活用やリモートワーク推進が加速してきている。例えば、町工場でテレワークを導入するケースが増えてきたことや、富士通による生産準備業務のリモート作業を可能にするツールの無償提供などがある。リモートワークの実施が不可能と思われていた「工場生産」にまつわる業務でも在宅勤務で作業ができるといった動きが増えており、明るい兆しがみえてきた。このような企業の変化・革新をサポートする政府のあらゆる対策・支援に期待したい。


[1] IMD, World Competitiveness Ranking 2020

[2] IMD, World Digital Competitiveness Ranking 2019

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