終戦から75年目を迎えて

日本のお盆休みというと、久しぶりに会う祖父母や親戚との再会を楽しみに、渋滞や混雑のなか帰省する、というのが恒例だろうか。親戚一同が東京に住んでいた私にとって、新幹線などを利用し「お盆に実家へ帰る」ことが特別に思えて、とても羨ましかった。


2020年は例年と違い、「Go To トラベル」が開始されるも、新型コロナウイルスの感染拡大を受け自治体が移動自粛を要請するなど、「静かなお盆休み」だった。


そんな「静かなお盆休み」のなか、日本は終戦から75年目という節目を迎えた。


終戦となる1945年8月15日を前にした8月6日、人類史上初めて広島に、9日には長崎に原爆が投下された。被爆75年目を迎えた2020年、泰納された原爆死没者名簿の死没者累計は、広島県で32万4,129人、長崎県では18万5,982人となった。


そんな恐ろしい原爆を含む核兵器は、現在世界にはどのくらい存在するのか。冷戦期のピーク時に70,000発に達した核兵器保有数は、2020年1月時点で13,400となっている(広島県発表)。核兵器は1980年代後半から、世界での保有数が着実に減少し始めている一方で、中国や北朝鮮などの保有数が増加しているのだ。


増加し続ける核兵器を減少へ後押ししたのは、初めて核兵器の削減を決めた条約であり、冷戦終結の象徴と言われた「中距離核戦力(INF)全廃条約」である。1987年にアメリカとソ連の間で締結され、1988年に発効された。しかし2019年2月1日、米国のトランプ大統領はロシアの条約違反を理由に「INF全廃条約」からの離脱を表明。半年後の8月1日に、同条約が失効されることとなる。


一方2017年7月7日、国連で122カ国の賛成多数で「核兵器禁止条約」が採択された。この条約は核のない世界を目指し、核兵器の製造や保有、使用に加え、核実験被害者の支援や汚染された環境の改善措置なども含まれている。50カ国が批准すると、その90日後に発効されることとなっている「核兵器禁止条約」。2020年8月6日にアイルランドなど3カ国が新たに批准、9日にはセントクリストファー・ネービスが続いたことで批准国は44となり、条約の発効まであと6カ国となった。


条約交渉会議で議長を務めたコスタリカのエレイン・ホワイト・ゴメス議長が、条約成立後に「核兵器の全面廃絶に一歩近づいた」と述べていたが、発効まであと6カ国になったことで、また一歩前進したのではないだろうか。


「核」に関するニュースに触れる度、「核廃絶」の道のりは険しいと思えてしまう。だからこそ多くの人が興味を持ち学び続けることが大切、と強く感じた「静かなお盆休み」だった。

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