快適な室温と労働の生産性を考える

2020年8月も終わりに近づいてきている、暦の上では「処暑」となり暑さが和らぐ時期であるが、まだまだ厳しい暑さは続いている。
政府が2005年から推進している「クールビズ」事業では、過度な冷房に頼らず快適に過ごせる軽装などを促すライフスタイルが提唱され、冷房時の室温を28℃(目安)に設定することが呼びかけられている。
注目すべき点は、ここでいう室温は、冷房の設定温度が28℃のことではない。当然、外気温や湿度、建物の立地によって室温は変化する。室内にいる人の体調なども考慮して室温管理をしなければいけない。
特に今年の夏は、密閉空間をさけるため、適度な換気が求められている。夏場に窓を開けて換気を行うと、外から入ってくる温かい空気により、どうしても室内の温度が冷房の設定温度より上昇してしまうので、注意が必要だ。


ダイキン工業が発表した調査[1]によると、オフィスで働く労働者らが快適だと思う室温は、性別や年齢によって差異があるものの、平均で25.1℃という結果が得られており、政府が推奨する室温と3℃近くの乖離がみられている。
また、姫路市[2]では、労働環境を快適にして仕事の効率を高めたいという思いから、働き方改革の一環として、2019年の夏、市役所本庁舎内の執務室内の温度を28℃から25℃に下げる取り組みを実施した。実施後の職員アンケートでは、業務効率が「とても向上した」「少し向上した」で85%を占め、就業意欲も「かなり高まった」「やや高まった」で83%という結果であった。さらに、前年同時期と比べると時間外勤務時間も減少がみられていた。
このように政府が推奨する基準にとらわれず、低い室温に設定することにより業務効率や就業意欲などの向上に一定の効果があったと言えよう。


企業にとって、政府が推奨するオフィスの室温を28℃に守ることは、諸経費の抑制の観点や地球温暖化などの環境問題には効果的なのかもしれない。しかし、労働者の作業効率が低下し、作業時間増加による損失を考えると一様に28℃に捉われるべきではないだろう。
昨今、新型コロナウイルスの影響により労働環境が日々変化しているなか、労働者が快適な環境で仕事に取り組めることは、労働者自身のためとなり、さらには企業のためになると考える。


[1]ダイキン工業「第7回 現代人の空気感調査」総合報告書 夏のオフィスの空気に関する調査結果 平成17年7月

[2]令和元年7月1日市長記者会見、令和元年10月7日市長記者会見

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。