組織や人間関係を向上させる『人を動かす』というスキル

人との関わり合いは、組織の活性化にとって一要素となりうる。例えば企業を例にとると、個で戦うよりも束で戦う方が組織全体の成果は格段に向上することが多い。職場の人間関係は個々人のモチベーションを大きく左右するといえそうだ。社員それぞれが同じ理念を持っていれば組織はまとまりやすい。つまり、組織全体の結束力は、企業力の表す一つの重要な項目といえよう。ただ、そうはいうものの、それが難しいというものだ。いつの時代でも、人間関係は難儀を極めるのが常である。


そこで、ご存じの方も多いと思われるが『人を動かす』(著:デール・カーネギー)という名著を紹介したい。本書はタイトルに準じて「人を動かす三原則」「人に好かれる六原則」「人を説得する十二原則」「人を変える九原則」「幸福な家庭を作る七原則」の5部構成だ。そのなかでも、特に私が本書を通じて感銘を受けた「人を動かす三原則」について、ほんの一部ではあるが紹介し、何某かの参考となれば幸いである。ちなみに、原書は1936年に初版が発行されており、日本における翻訳版は500万部を誇る。「不朽の名著」という触れ込みだ。


(1)盗人にも五分の理を認める
盗人の持つ悪の心を動かすには、やるべきことは粗探しや非難、詰問ではない。そうすると、相手は何とか自身を正当化しようとして、反抗心さえ生じてしまう。かえって反感を買うのではなく相手を理解しようと努め、自尊心を傷つかせないことが大事である。


(2)重要感を持たせる
人を動かすには、自ら動きたくなるような気持ちを起こさせることが秘訣である。では、そのためにはどうすればいいのか?それは、人間の"重要人物たらんとする欲求"を満たしてあげることが大事だ。人間はみな、他人に認められることを渇望している。食事をすることと同じように心にも栄養を、すなわち賛辞や評価を与えなければならない。


(3)人の立場に身を置く
魚を釣るときに、人間は自らの好物をエサにはせず、魚が好むエビなどを針に通す。この常識は人間にも通じるものだ。常に相手の立場に身を置いて考えることで、その人の好むものを考え、それを手に入れる方法を教えてやれば人の心は動く。


私自身も、当コラムを書いた者として「隗より始めよ」の心で、何度も本書を読み返して心から実践していきたい。また、著者のカーネギーはこう言っている。


「私が教えているのは小手先の話術ではない。結局は心から行わないと何一つ響かないのだ」

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