東京の国際競争力強化、羽田空港を取り巻く環境

2020年の旅客輸送業界は、新型コロナウイルスの影響による観光需要の減少や出張の抑制などにより旅客輸送量は大幅に減少した。とりわけ、航空業界を取り巻く環境は厳しく、渡航制限や外出自粛などによる相次ぐ運休や減便が長期に渡り続いた。2021年も引き続き業界全体は厳しい環境となるだろう。


そのようななか2021年1月20日、JR東日本が推進している羽田空港アクセス線(仮称)の鉄道事業許可が交付され、将来を見据えた東京の国際競争力の強化に資するプロジェクトが動き始めた。


現在、羽田空港に到達するためには、京急電鉄と東京モノレールの2路線とリムジンバスが主要な交通手段である。これに2029年度の開業を予定する羽田空港アクセス線(仮称)が加わる。この新路線の強みは、既存の鉄道ネットワークを活用した「シームレス移動」の実現である。これまで最低1度の乗り換えで、30分程度要していた東京駅から羽田空港間の移動を乗り換えなしの約18分で結ぶなど、首都圏の多方面からダイレクトアクセスが可能となる。


首都圏空港への交通アクセスは、東京の都市競争力を高めるうえで長年の課題と指摘されているが、解消に向けて大きな期待ができる。


また、空港利用者にとって移動の選択肢が増えることは大きなメリットとなろう。首都圏主要駅からの空港到達までの時間短縮や乗り換え回数減少は、荷物の多い旅行者にとっては移動の負担軽減になる。ビジネス利用者にとっては、天災や事故などで不通の経路が発生しても代替手段が複数あることは心強い。加えて移動の選択肢が増えれば、それだけ人が分散することとなり、いま提唱されている新しい生活様式にも合致してくるのではないだろうか。


さらに、羽田空港への鉄道アクセス路線には、東京都大田区が中心となり東急多摩川線を蒲田駅から延伸し京急空港線に乗り入れるプロジェクト、新空港線(通称、蒲蒲線)の新設も検討されているなど、羽田空港を巡る明るい話題は目白押しである。


日本最大の利用者数を誇る羽田空港。新たなアクセス路線が開業することで、今以上に地方や世界が近づいてくる。利用者の利便性向上だけでなく、企業にとっては、新たなビジネスチャンスが生まれる機会となろう。

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