東日本大震災、福島第一原発事故から10年の今

東日本大震災から10年。テレビでは様々な特集番組が放送され、映像とともに、あの日からの10年を思い起こした方も多いのではないだろうか。


2020年3月14日、震災により不通となっていたJR常磐線の富岡駅と浪江駅間が開通し、9年ぶりに全線が開通した。2020年12月末には、計画されていた「災害公営住宅」のすべてが完成。2021年内には、青森と福島を結ぶ全長570kmの「復興道路・復興支援道路」が全線で開通予定となるなど、着実に復興への道のりは進んでいる。


また、東日本大震災からの復興を目的に設置された復興庁の設置期間が2030年度末まで10年延長される。2021年3月末で終了する「復興・創生期間」は2021年4月からの「第2期 復興・創生期間」(5年間)へと受け継がれ、1.6兆円程度の事業規模が見込まれており、政府による被災地への支援も続いている。


しかし一方で、福島県大熊町と双葉町にまたがる福島第一原子力発電所(以下、福島第一原発)で発生した事故は、10年経った今も厳しい状況が続いている。


1号機から6号機までの6つの原子炉からなる福島第一原発での事故は、東日本大震災の地震と津波による影響で、外部からの電源のほか非常用発電機などすべての電源が使用できなくなる「ステーション・ブラック・アウト」と呼ばれる事態が世界で初めて発生した事故でもあった。3つの原子炉で冷却装置が停止し、核燃料が溶けるメルトダウンが発生。その後、溶けた核燃料のカバーなどから発生した大量の水素が屋内にたまり、水素爆発が起きたのである。


現在、福島第一原発では廃炉にむけての懸命な作業が進められているが、原子炉内部に残る溶けた核燃量が固まった燃料デブリの撤去作業は難航している。また同時に、燃料デブリを冷却する際に使用した水や、廃炉にともない発生する「放射性廃棄物」をどのように処分するのか、大きな課題となっている。冷却に使用した放射性物質を含む水の発生量は、事故発生当初より大幅に減少しているものの、2020年1~12月の1日の平均発生量は140トン。それらは、福島第一原発の構内に設置されたタンクおよそ1000基にためられているが、タンクの9割が埋まっており、補完容量の限界が近づいているのだ。


「半世紀近くにわたり、福島第一原発が生み出してきた大量の電力は首都圏で消費され、日本の経済を支えてきました。その原発の後始末をどうするのか。福島県だけでなく、社会全体の問題として受け止め、向き合っていく必要があるといえます。」NHKで福島第一原発について特集されていた番組でのフレーズが心に刺さる。電力がなければ生活できない現代社会の一員として、必ずや次世代に受け継がれる福島第一原発の問題をもっと知るべきであると。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。